内容説明
どん底から辛抱と努力を重ね、祇園一の美女・豆葉の妹として座敷に出るうちに、さゆりという舞妓名は徐々に知られるようになる。15歳にして当時の最高額で水揚げされ、やがて押しも押されもせぬ人気芸妓に育っていく―。緻密な描写、ヴィヴィッドな語り口と人物造形で、様々な先入観を覆した、かつてなくリアルな花柳小説。
著者等紹介
ゴールデン,アーサー[ゴールデン,アーサー][Golden,Arthur]
1956年、テネシー州チャタヌガ生れ。ハーヴァード大学卒業後、80年にコロンビア大学で修士号取得。関心はおもに日本の美術史に向けられていたが、いくたびかの日本滞在ののち、作家を志すようになる。88年ボストン大学で修士号を取得した後、10年近くを費やして完成させた『さゆり』が世界的ベストセラーに
小川高義[オガワタカヨシ]
1956(昭和31)年、横浜市生れ。横浜市立大学国際文化学部助教授
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感想・レビュー
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NAO
56
日本独特の風俗でありながらその内情があまり書かれることがなかったのは、日本の作家がこういった世界を書いた場合、狭い世界であるがゆえに、「誰々先生が書いたということは、このモデルとなった芸妓は◯◯だ」というようにネタの出所が分かってしまうという縛りがあったからだろう。そういった縛りのない外人の方が、きちんとした紹介を得て話を聞くことさえ出来れば、日本人よりもはるかに書きやすかったのかもしれない。作者が「ニューヨーク・タイムズ」社の一族であることもこの作品を書くに当たって有効な切札となったのではないだろうか。2024/09/13
紅香
31
置かれた場所で精一杯、流れ着いたのだな。。のしあがるって、そんなに立派なことなのかな。恋も含め、欲望に生きる私達の場所、なんだか淋しい。さゆりの締めくくりの言葉がすべてを物語る。『今にしてみれば、この世の中、たまたま海に浮いた波みたいなもの。どういう苦労をして、どんなに晴れがましいことがあって、どれだけ骨身にしみたところで、あれよあれよと取りまざって、紙にたらした薄墨のように滲むだけです。』2016/05/22
たまきら
22
「日本の花柳界を知りたいけど、もう女の子にはパトロンがいて外国人は外部をなぞるだけで・・・」みたいな外国人によるエッセイを以前何かで読んだんですが、なんだかそのようなあこがれを強く感じる話でした。「こうだったらいいのに・・・」的な。女をこういうふうに描写するのもさらりとしていていいのかもなあ。でも、自分思うんです。女子はね、男がさらりと描けるものじゃないんじゃないかな、と。2017/11/30
かおる
16
読み終わってしんみり。最後の言葉が好きです。「どういう苦労をして、どんなに晴れがましいことがあって、どれだけ骨身にしみたところで、あれよあれよと取りまざって、紙にたらした薄墨のように滲むだけです。」2016/03/30
James Hayashi
15
米人が書いたフィクション。詳細までこだわり日本文化のエキゾチックさが伝わる。著者と訳者の両者ともかなり良い仕事をしたと感じた。2021/05/18
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