文春文庫
贋世捨人

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  • サイズ 文庫判/ページ数 299p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784167654047
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

私は愚図で、腑抜けだった。大学を出て、広告代理店に勤めるも、金儲け主義に嫌気が差し、辞めてしまう。その後、職を転々とし、流れ流れて料理屋の下足番になった。世間に背を向け、抜き身で生きていこうとした青年期から小説家になるまでの葛藤を執拗なまでに描きこんだ、私小説作家・車谷長吉の真骨頂。

著者等紹介

車谷長吉[クルマタニチョウキツ]
昭和20年、兵庫県飾磨市(現・姫路市)生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。広告代理店、料理屋などで働きながら小説家を目指す。平成5年三島由紀夫賞と芸術選奨文部大臣新人賞、平成9年『漂流物』で平林たい子文学賞、平成10年『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞を受賞。平成13年には「武蔵丸」で川端康成文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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魚京童!

32
真面目に読んでしまった。面白かった。私も贋ものだ。世捨人にはなれない。でもどの世かにもよる気がする。違うな。こんなことが書きたいんじゃない。昨日読み終わって感動したのに、今日はすでにもう過去。あの気持ちがどこかへいってしまった。何も為さない人生だと思う。でも私の人生が何かを為しえるのだろうか。逃げて、逃げて、逃げて、逃げた先は輝かしい未来なのだろうか?生きていけるけど、意味がないのなら、生きる意味などあるのだろうか。なんか違うよね。もっと高尚な何かがここにはあったのに。どこかへ行ってしまった。感想は水物だ2020/06/18

しあん

23
凄まじいまでの自己破壊の衝動にかられながら、作者が破滅を欲しながら生きている、その青年期から作家に至るまでの私小説である。学生時代に人を殺したいと思っていたとのくだりには、こういう人が人を殺すのだろうなと思わされた。攻撃性が自分に向くのも他人に向くのもまた表裏一体なのだ。また作者は美しい女から辱められたいという欲望を強く持ちながらも、相手への気持ちの伝え方は常軌を逸しているし、強引なのである。結局お前は自己本位に生きているだけの変態じゃねえかと、踏みにじってやりたい気持ちふとなりました(笑)。2018/09/18

ハチアカデミー

11
ルサンチマンの固まりの様な男が迷走をしつつ、文士となるまでの物語。しかしそれは、立身出世といったプラスのベクトルではなく、ズブズブと泥沼に足を引きずり込まれるかのような陰鬱なものであった。実名の著名人が登場するが、中でも歯を食いしばり小説を書き続けた果てにすり減り虚ろな口となった陳舜臣のエピソードが印象に残る。「贋」というのがキーであり、それは島田雅彦「サヨク」に近い。時代が孕んだ既視感と、本物に成りきれない(そう思いこめない)感覚が、今なお共感できるのだ。面白くって駄目になる車谷ワールドを満喫。2014/01/18

donut

8
とても面白い。強烈なエピソードが次から次へと並べられているのでのめり込むように読んでしまった。「島は前歯が一本抜けた男だった。」みたいな段落の最後に置かれる象徴的な一文というか、登場人物の人となりを表す換喩的な一文が上手いなと思う。石牟礼道子、高橋たか子、大江健三郎、後藤明生、小林秀雄…等々作中で名前が挙げられる文壇関係者達も豪華なメンツ。2021/05/30

YO)))

8
なんたるタイトルオチ.学生時分から紆余曲折を経て作家として一本立ちするまでの半生が時系列で淡々と書かれてあるが,短編諸作や「赤目四十八瀧~」に比べると,濃厚な因業の旨味・エグ味にいまひとつ欠ける. 路上で見掛けた女の後を付けて家に押しかけ,三ヶ月後に喫茶店で待ち合せをしようと言い,その女が実際にやってくる,とか,いくらなんでも有り得ないですよ…ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから,と思うた.やはりこの人は根がロマンチストにできてるのではないだろうか.2012/07/28

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