文春文庫
忌中

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  • サイズ 文庫判/ページ数 229p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784167654030
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

死んでも死に切れない―。泣く泣く妻を殺め、女に狂い借金まみれの挙句に自殺した初老の男。若くして自殺したエキセントリックな叔父の後日談。事業失敗で一家心中をはかり、二人の子供を道連れにした夫婦。強姦殺人の憂き目にあった高校時代の女友達。救済でもなく逃避でもない、死者に捧ぐ鎮魂の短篇集。

著者等紹介

車谷長吉[クルマタニチョウキツ]
昭和20年、兵庫県飾磨市(現・姫路市)生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。広告代理店、料理屋などで働きながら小説家を目指す。平成5年『鹽壷の匙』で三島由紀夫賞と芸術選奨文部大臣新人賞、平成9年『漂流物』で平林たい子文学賞、平成10年『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞を受賞。平成13年には「武蔵丸」で川端康成文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

メタボン

35
☆☆☆☆☆ 命終のときに向かって、情念が燃え上がるような「三笠山」「忌中」が凄まじい作品だった。特に吉野秀雄の「寒蝉集」の三つの短歌を背景に男女が最期にまぐわう「三笠山」には魂が震えた。強姦され悲惨な最後を遂げた女友達を鎮魂する祝詞が印象深い「古墳の話」。舟越保武の<病醜のダミアン>を題材とした「神の花嫁」。不具となった夫の自殺後、異母姉の夫と交わるようになった「飾磨」。他、「鹽壺の匙」補遺。この短編集の作風は合わない人もいると思うが、はまる人にとっては、おぞましくも惹きこまれてしまう唯一無二の文学だ。2019/10/06

はらぺこ

35
短編集。楽しい話は1個も無かったけど嫌いじゃない。かといって好きでもない。悲惨な話ばっかりで暗くなる短編集やったけど、『古墳の話』に出てくる実際の事件に比べれば少しはマシに思える。2017/02/17

りらこ

27
初車谷長吉作品。短編集。全て死を書いている。死を書くと言うのは生を書くことの裏返しなのだ。死と隣り合わせにある日常。表題作の忌中は、自分の人生を破滅させた男の話。妻を弑し自分は死にきれない。ならばきちんと跡を追えるその日まで破滅的に生きるのと、今までの趣味的な自分と両方とも満足させる姿。最初から最後まで男は言葉の概念に囚われてもいる。意味を持った言葉を知りたいのはこの話のなかでどこに繋がっているのか。それは最後にわかる。他の作品にある、2枚目の紙の仕掛けによって小説が書ける仕掛けはここだ、と思う。2023/06/01

じゅむろりん

19
車谷作品初読みで、死にゆく人の哀愁や残された人の諦観の念を淡々と描写した短編集。強姦殺人、一家心中、後追い自殺等字面を追えば救いのなさそうな設定ですが、不思議と不快でなく相手への愛情すら感じられます。これ、フィクションですよね?と確認したくなるリアリティとなんとも言えない結末が強烈な印象を植え付けます。「忌中」がダントツ凄い。愛する妻を介護疲れから自ら手にかけ、後追い自殺の前にとった主人公の行動は、狂気でもあり暴走でもあり、純愛でもあると思います。2022/03/30

a子

18
これは何ともすごい物を読んだ。抜け殻のように淡々とした文章。その中に静かに迸る生、死、そして愛。真っ黒な水面に揺れる街灯の明かりをぼぅっと眺めるような非現実感と、作りもののないまっさらでリアルな感情。浮遊するような、沈んでゆくような、惨たらしく美しく。うわー、まいったな、、心が痺れる。2020/01/07

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