内容説明
戦場から戦場へ―戦争写真家キャパは修羅の巷でシャッターを切り続ける。スペイン、中国、北アフリカ、シチリア島、イタリアの最前線で彼のレンズは“戦争”を捉え、伝える。だが、その戦場で、同僚であり最愛の女性だったゲルダを喪い、生涯の友人となった作家のヘミングウェイと出会う。戦場が日常と化したキャパの奮闘は続く。
目次
磔にされた町
戦場から戦場へ
明日にはもっと
長い葬列
生み出される死
四億の民
別れの儀式
ニューヨークへ
偽装結婚
亡命者たち
打ち砕かれて
ピンキー
熱砂の戦場
シチリア上陸
岩と泥と雪と
著者等紹介
ウィーラン,リチャード[ウィーラン,リチャード][Whelan,Richard]
1946年、ニューヨーク生まれ。エール大学で美術史を学ぶ。“ART news”の他、“Art in America”“Portfolio”“CAMERA Arts”などの各誌に広く投稿する
沢木耕太郎[サワキコウタロウ]
1947(昭和22)年、東京都に生まれる。横浜国立大学卒業。79年「テロルの決算」で大宅壮一ノンフィクション賞、82年「一瞬の夏」で新田次郎文学賞、85年「バーボン・ストリート」で講談社エッセイ賞、2003年、ノンフィクション作品での功績に対して菊池寛賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さきん
17
スペイン内戦参加から第二次世界大戦のDデイまで。キャパの黄金期と言っても良いほど戦争という場に恵まれた。恋した女性に死なれてしまう、ジャーナリストや将校との交流。スペイン内戦、第二次世界大戦で死ななかったのが奇跡と思えるくらい、頻繁に移動し、戦場に足を運んでいる。ナチスドイツにハンガリーを占領され、またソ連に占領された時に祖国をどのように思ったのだろうか。2017/12/22
Toshi
10
リチャード・ウィーラン著、沢木耕太郎訳による、キャパ評伝の第二部。「崩れ落ちる兵士」撮影後、ゲルダの死からイタリア戦線までを描く。ここでもウィーランは、キャパが「ちょっとピンぼけ」で描いたほら話を暴いていくのであるが、キャパへのレスペクトは不変である。一方ヘミングウェイのスタンドプレーに対しては冷徹で、そのことは沢木も雑記で触れている。さてその雑記は今回も絶好調である。そのほぼ半分を「崩れ落ちる兵士」に対する疑惑に充て、「キャパの十字架」執筆に至る思いが読み取れる。2021/02/08
ランフランコ
6
三部作の真ん中だったんだねぇ。失敗した。最初から読む方が良いに決まっているが時既に遅し。この本を読むに当たっての予備知識が無さ過ぎたのもいけなかった。偉大なる戦争写真家ということだけで読んでしまうとちょっと難しい面もある。キャパの人となりはもっとシリアスでゴリゴリの戦争写真家だと思っていたが、意外と不真面目で女好きだった。そこはなんか親近感が沸くし、戦地に行く行動力だけでも尊敬に値する。しかし代表作の写真は捏造疑惑があるようで。もしそうならば私の尊敬返して下さい。でもキャパを知るにはやっぱ写真見ないとね。2018/02/26
ichiro-k
2
20世紀を代表する戦争フォトジャーナリストの伝記。戦争に身を置く極度の緊張感(兵士ではない)と社会生活のだらしない非生産的(捏造もどき・女性関係など)な生活ぶりのギャップは、冬山などに登る緊張感と下山後の開放感のギャップに似ている。登山は難易度が上がればあがるほど緊張感が増し、下山後の開放感を大きく感じる。その快感が「中毒」になる。2010/04/04
tora
1
かの「崩れ落ちる兵士」をとった後、最愛の女性をうしないながらも、一流の戦争写真家になってゆく様が描かれています。写真の真贋論争がある事がしめすように、また著者がひとつひとつ暴いているように、たしかに嘘の多いひとではあったのでしょう。けれどその大部分はにくめないもので、彼自身の人柄もそうだったのだろうと思わされました。……私個人としては、世界史の知識のなさに愕然としました。2012/04/23