文春文庫
ベトナムの少女―世界で最も有名な戦争写真が導いた運命

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  • サイズ 文庫判/ページ数 455p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167651114
  • NDC分類 223.1
  • Cコード C0198

内容説明

1972年6月8日、アメリカ軍のナパーム爆撃から逃げまどうはだかの少女の写真が世界中を駆け巡った。「世界一有名な戦争被害者」になった当時9歳のキム・フックの人生は、ベトナム戦争後もこの写真のために翻弄されつづける。それは、冷戦構造のなか、「プロパガンダの道具」として彼女を利用するベトナム共産党政権との闘いだった。

目次

露出
お屋敷のお姫さま
餅米と豆のあいだ
運命の爆弾
笑顔に隠された記憶
火傷治癒と終戦
極貧生活
新たな戦争と学生生活
プロパガンダの道具
ドイツでの手術
ドン首相との邂逅
キューバ留学
突然のアメリカ旅行中止
結婚、そしてカナダへの亡命
赦し

著者等紹介

チョン,デニス[チョン,デニス][Chong,Denise]
1953年、カナダ西海岸のバンクーバー生まれ。中国系カナダ人三世。トルドー政権の上席経済顧問官を務めたエコノミスト。87年、母親とともに消息が途絶えていた中国の肉親訪問が実現したのを機に「チャイナタウンの女」(文春文庫)を執筆、各種ノンフィクション賞を受賞

押田由起[オシダユキ]
昭和26(1951)年、東京生まれ。上智大学外国語学部卒業
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

けろりん

57
【第135回海外作品読書会】世界に衝撃を刻みこんだ一葉の写真。被写体となった『ベトナムの少女』キム・フックの半生の詳細なルポルタージュであり戦争が及ぼす人類、環境、社会への果て無き災禍への警鐘を鳴らす書でもある。生を受けた地で、倹しく家族や隣人を愛して暮らす人々にとって、国家間の争いや、政治、思想などは、遠い世界の事だ。けれど戦争は容赦なく庶民を惨い苦痛と憎悪の渦に引きずり込む。爆撃によって負った傷と、彼女の存在を政治的な駒として利用する革命政府の非道に戦後も翻弄され続けたキムの姿は、過去のものではない。2019/06/18

Willie the Wildcat

19
1枚の写真。”運命”として人生と向き合う。数え切れない試練を糧に、少しずつ、少しずつ、自身への誇りと自信を持つ心情の変化。根底は、『夢』と『心の拠り所』。これらが生きる支え。母親の生き様も印象深い。家族との精神的な乖離の過程が対照的。一方、報道のあり方を考える。興味本位、恣意的な姿勢に対して、読者の客観的な判断が重要。「ナパーム娘」は人の尊厳への考慮があまりにもなさ過ぎる!蛇足だが、ペレストロイカ前後のキューバ文化も興味深かった。特に”アイスクリーム”が好印象。(笑)2013/01/23

sasha

12
ナパーム弾に焼かれ泣きながら全裸で逃げる少女の写真。数多くの有名写真を生んだヴェトナム戦争の写真の中でも世界に衝撃を与えた写真の被写体となったキム・フックは、戦後もこの1枚の写真に翻弄される人生を送った。共産党政権のプロパガンダに利用され、だが経済的に苦しい生活を送り、学びたいと思った勉強も断念せざるを得なくなる。キューバ留学からカナダへ亡命し、やっと安住の地を見つけたのだね。「フック」はヴェトナム語で「幸福」。長い辛い時間を経てやっとその名の通り「幸福」が彼女に微笑んだ。2018/01/30

スー

8
戦争に巻き込まれ人生を狂わされ、たまたま記者がいた為に写真になり、世界的に有名になった少女の物語。少女は幸福を意味するフックと名付けられます。フックは皮膚の35%に火傷を負い皮膚移植をするが頭痛や背中の傷み皮膚の体温調節機能を失った為に苦しみます。フックを救ったのは医療とキリスト教でした。フックは自分の夢と国から忘れられる事を願うがどれも叶わなかった。キューバで人々とふれあい初めて化粧をしてお洒落をし海水浴に行き女性としての自信を取り戻せた。今、彼女は新しい家族を手に入れ全てを受け入れ赦しています。2016/08/16

テツ

4
戦争でこどもが泣くのも死ぬのも嫌だ。戦後、世界で最も有名な戦争写真として有名になった彼女を共産党政権が利用し続けたという大人の汚さも嫌だ。戦争に人生を翻弄され続けた彼女を支えてくれ救ってくれたのは信仰なのだけれど、神様がいるなら何かが起きた後じゃなく、起きる前に助けてやって欲しいよな。空爆されて泣きながら逃げるこどもを見ているなら早く何とかしてやれよ。戦争はしちゃいけない。絶対。2013/11/09

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