出版社内容情報
九九年に大宅賞を史上最年少受賞した著者のデビュー作。奄美・沖縄そして台湾で、ハブ毒の血清治療に尽力した医師の半生を追う
内容説明
昭和30年代、奄美大島や沖縄ではハブによる咬症被害が続出していた。現地を訪れ被害の深刻さを目撃した医師・沢井芳男は、半生を血清改良や予防ワクチンの開発に捧げる。やがて沢井は台湾、そして世界へ、その活動の場を広げていく。被害撲滅の情熱に燃えた男の軌跡を追った医学史発掘ノンフィクション。
目次
第1章 奄美大島
第2章 奄美から沖縄へ
第3章 ハブトキソイドへの道
第4章 毒牙の列
第5章 中医への挑戦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
goro@80.7
53
面白い!引き込まれた!研究室でハブの血清を作っていた沢井芳男が、初めて奄美大島で見たハブ咬傷患者の実態に驚きその後の人生を毒蛇に対するワクチン開発に捧げた物語。今ではそのお蔭でハブに噛まれれば血清を打てば何ともないと言えるのだろうが、それは沢井先生方の先人の努力と熱意の賜物だったんですね。何事も現場を見なければと改めて思う。若い人に読んでもらいたい本です。いや老いてる人にも是非!2017/10/02
ach¡
35
…島の人々にとってハブは季節を問わず、いつどこで咬まれるかわからない恐怖の存在であった。咬まれたら最期、焼け火箸を突っ込まれた様な激痛に苦しめられ死亡には24時間もかからない。血清は島全体に行き渡らず患部をナタで切り落としたり松明で焼くといった荒治療も当たり前であった。たとえ血清を打てたとしても咬症は多岐にわたり、筋肉や血管を腐らせ壊死を引き起こす。死ぬ者が後を絶たなかった…これは、そんなハブの毒から島民達を救い、延いては世界の毒蛇に立ち向かった1人の男の壮大な物語である!!〜 風の中のすばるぅ〜♩ 2017/11/29
sasha
9
毒蛇ハブの血清製造をしていた医師が、奄美大島や沖縄でのハブ被害を目の当たりにして蛇毒撲滅の為に真剣に向き合った記録である。血清の改良、予防ワクチンの開発。そして、日本だけではなく、毒蛇被害の多い台湾でも調査を行っている。自分が製造していた血清だけでは防げない被害があるのを知って、ならばより良い処置は何かと調査・研究に邁進する姿が熱い。その熱意が読み手にも伝わる良質のノンフィクションだ。実際の蛇毒被害の例が多く掲載されているが、めっちゃ怖いぞ~。2018/11/08
橘
8
時を経てなお色褪せない、生命と予後を守る人々の闘い。こんな熱い人間たちがいたのか。そして悲劇的だからこそ、毒蛇すらも自然の恵みと捉えるしたたかな島民たち。強烈な自負心が文章から立ちのぼる、渾身のノンフィクション。2017/02/13
くれの
5
グローバルに毒蛇咬症の改善の研究を続けた沢井先生を慕う著者の情熱が本書の隅々まで感じられます。絶命を免れたとしても苦しまされるハブ禍の怖さを知りました。人の為に尽くす医学者の誠実で真摯な姿にただ頭が下がります。2016/08/19