内容説明
最近の私の好みは、「生々しい小説」に尽きる。良くも悪くも、作者の生理が感じられるもの―。衝撃の書を世に問い続ける作家が、ひとりの読者に立ち返って選んだベスト・オブ・ベスト。島尾敏雄・ミホ、菊池寛、太宰治、坂口安吾、林芙美子、谷崎潤一郎ら、ともに生きながら哀しく行き違わざるを得ない生の現実を描いた11篇を収める。
著者等紹介
桐野夏生[キリノナツオ]
1951年、金沢生まれ。成蹊大学法学部卒業。93年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞受賞。98年『OUT』で日本推理作家協会賞受賞、99年『柔らかな頬』で第121回直木賞を受賞。2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞受賞。04年『OUT』が日本人としては初めてエドガー賞(MWA主催)の候補になる。同年『残虐記』で柴田錬三郎賞受賞。05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞受賞。08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
56
如何にも桐野夏生らしい不穏なセレクトで、再読が多いも興奮。菊池寛は大正の作品だが、私はつくづく昭和の小説が好きなのだと実感する。2020/01/17
カ
29
心に残る物語、日本文学秀作選シリーズ6冊目。これで全て読んだけど、6冊見比べてみると、どの著者も選ぶ文豪は似ていて、さすが有名文豪だと思った。芥川や太宰、谷崎などは結構読んだけど、江戸川乱歩はやっぱり衝撃でした。あとは、松本清張かな。また色々読んでいきたいです。2015/03/12
あつひめ
29
最近では現代小説ばかりを読んでいたので、すごく豪華なご馳走を頂いた後のような満足感を感じた。作品の中から漏れてくる饐えた臭いや狂おしくなるほどの欲情。生き様がそれぞれの物語の中に閉じ込められているような濃度の濃い作品集。読まれることを意識しながら書き綴る日記・・・人間の終わりのない欲望が溢れている。フツーなら手にとらずに通り過ぎた作家さんばかり。このシリーズで読書の嗜好に新しい物をプラスしたくなった。2010/07/19
おにく
22
読むペースが週に一冊程度だと、初めての作家さんや名作文学はなかなか手が出しにくいもの。だけど、お気に入りの作家さんが影響を受けた作品であれば安心感がありますね。桐野さんの作品を彷彿とさせる名作文学選で、作品の選び方も面白い。中でも太宰治の“ 水仙 ”は読んでいて、心がぎゅっとわしづかみされました。作品のモチーフになった“忠直卿行状記”が同時に読めるのもありがたい。読んでよかったです。 2018/01/30
ophiuchi
12
桐野夏生らしさにあふれた名作アンソロジー。林芙美子と菊池寛を読むのは初めてで、その他も含めどれもこれを手にしなければ読むことがなかったと思われる作品だが、凄みのあるものばかりだった。2015/11/28