内容説明
“本の達人”北村薫さんが人生の折々の詩歌との出会いとその後のつきあいをていねいに描くエッセイ評論。三好達治、石川啄木、塚本邦雄、佐佐木幸綱、石垣りん、松尾芭蕉、五島美代子、西條八十などの著名人とともに小学生や三歳の子供を含む無名の書き手も登場。博覧強記の著者のフレンドリーな個人文学館。
目次
「集団」(アンドラージ)
「師よ萩原朔太郎」(三好達治)
「佛頭光」「ある朝の」(石川啄木)
「じ」(松田豊子)
「不運つづく」「醫師は」(塚本邦雄)
「じりじりと」(佐佐木幸綱)
「サキサキと」(佐佐木幸綱)
「胸に抱く」(舘岡幸子)
「山国の」(望月紫晃)
「悲しみ」(石垣りん)〔ほか〕
著者等紹介
北村薫[キタムラカオル]
昭和24(1949)年、埼玉県生れ。早稲田大学第一文学部卒業。大学在学中はミステリ・クラブに所属。高校で教鞭を執りながら、昭和59年、創元推理文庫版日本探偵小説全集を編集部と共同編集。平成元(1989)年、「空飛ぶ馬」でデビュー。平成3年、「夜の蝉」で日本推理作家協会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yumiha
33
再読。毎度のことながらすっかり忘れていた内容💦『月の砂漠を・・・』のサキちゃんの出典が、「サキサキとセロリ嚙みいてあどけなき汝を愛する理由はいらず」(佐々木幸綱)ちゅうのも覚えていなかった💦「黄泉路かへし母よふらここ押したまへ」(星野慶子)や「亡き子来て袖ひるがへしこぐと思ふ月白き夜の庭のブランコ」(五島美代子)と『火星年代記』(レイ・ブラッドベリ)をつなげる力技は、さすが北村薫だ。未読の『火星年代記』を読みたくなった。チャンドラー『長いお別れ』と西條八十もつなぐ力技もあっぱれ。西條八十が印象深い。 2020/05/06
spica
14
まるで穏やかな日差しの降り注ぐ午後に、心地よい授業を受けているような気持ちになります。北村先生の紡ぎ出す言葉のひとつひとつが、自分たちが普段当たり前のように用いている日本語の美しさを教えてくれました。海外の詩も翻訳次第で、全く違ったものになるんですね。今まであまりにも詩歌から離れて過ごしてきてしまったけれど、詩歌の持つ深みに今後は少しでも多く触れていきたいと思いました。2010/05/28
akio
12
「作品があればそれで十分――というのは、潔い態度のようです。しかし、一人の読む力には限りがあります。(略)このように、見えない世界を開いてくれるのですから。」急いで読むのが勿体なくて、読んでは寝かせを繰り返し、ようやく読了。普段詩歌に触れる機会が無い私にとって、北村さんのような豊かな目線で味わうことが出来る方に案内頂けたことを幸せだと感じました。挿絵の雰囲気も好きです。続巻も気になります。2014/06/04
不在証明
8
古今の詩歌について、様々な思い出と共に紹介される。「親類の子も大学を落ちてくれ」―なる川柳を見た時に、筆者は《何て嫌な句だろう》と思ったという。しかし、この「くれ」は命令・願望ではない。連用止めである。〈親類の子〉は、〈落ちてくれ〉たのです。と説明された途端、見方ががらりと変わる。人間の持つ浅ましい部分を逆手にとったこの句には、筆者と同様に驚いた。/二回り下だともう知られていない、という「そうだー村の村長さんが、そーだー飲んで死んだーそーだー」みたいなうたは、たぶん今の小学生でも知っているのでは。2017/03/23
セルジオ肥前
6
これまで詩や短歌に関しては食わず嫌いな所があったが本書はとても面白かった。2011/09/05