内容説明
人生は“配役”の問題だ。殿様面の大部屋俳優・安間安間と、馬鹿で酒乱で美貌の三十女・華ちゃん。二人を拾った老女“川獺のお月さん”は、彼等に王朝の衣装を着せ、ニセ華族さまの結婚でひと儲けをたくらむが…。実在の事件を題材に、可笑しくて切ない人間模様を絢爛豪華な筆致で描き出す、久世光彦最後の小説。
著者等紹介
久世光彦[クゼテルヒコ]
昭和10(1935)年、東京生まれ。東京大学文学部美学科卒業後、東京放送に入社。「七人の孫」「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「ムー一族」等のヒットドラマを手がけ、54年退社。カノックスを設立後、演出家、映画監督、作詞家として活躍。平成4年、「女正月」他の演出で芸術選奨文部大臣賞受賞。5年、「蝶とヒットラー」で第3回ドゥマゴ文学賞受賞。6年、「一九三四年冬―乱歩」で第7回山本周五郎賞受賞。9年、「聖なる春」で芸術選奨文部大臣賞受賞。13年、「蕭々館日録」で第29回泉鏡花文学賞受賞。18年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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YO)))
21
宮家を騙って結婚披露宴を開き、多額のご祝儀を集めた有栖川宮詐欺事件。本作は同事件をモデルにしたフィクションだが、現実の事件の生々しさからは離れて、時にユーモラスでファンタジックな佇まいすら感じさせる大人のメルヘンに仕立てられている。演出過剰に思える箇所や、人物へのフォーカスの当て方など、少々テレビ的に過ぎると思ったりもするが、そういう点含めてノスタルジックで良いのかもしれない。絢爛豪華にして色彩乱舞のラストシーンは、鈴木清順に映像化してもらいたいなぁと思ったり。2015/10/13
いたろう
9
久世光彦の遺作。久世光彦の小説によくあるようなおどろおどろしいまでの妖しさが希薄だが、その分、現実の事件を元にした非現実的な世界にすっと引き込まれる。敢えて多くを語らず、そぎおとしたような文章なのにその映像が頭に浮かぶのは、TV 出身ならではか。2013/03/09
エドワード
5
映画「スティング」で有名なコンゲーム。お月さんこと穴太月は穴太慰子と名乗り、大部屋俳優・安間安間と<馬鹿だけど阿呆じゃない>不思議な美女・魚住華を拾って、有栖川識仁と華と名乗らせて結婚式を仕掛け、ご祝儀で一攫千金を狙う。うまく行くんかい?華「最後の晩餐じゃないよね」安間「華ちゃん、最後の晩餐知っているのやな」華「知ってるさ。ミケランジェロだろ」いかにも久世さんらしいセリフ。ウソみたいな話だが、2004年に東京で実際にあった話がモデルというから驚く。お月さんは「詐欺じゃないよ」というが、どうみても詐欺だな。2012/12/12
skellig@topsy-turvy
5
2003年実際に起きた「有栖川宮事件」を題材にしたそうですが、久世さんの手にかかって華麗な化かし語りへ。きゅっとしまった流麗な文体と美しい描写にうっとり。2012/12/05
九鳥
2
久世さんの最後の小説。物悲しくて滑稽で綺麗なお伽噺。もう彼の新しい小説を読むことができないのがまだ信じられない。2008/06/30