出版社内容情報
江戸の空の下で再会した兄弟の深い絆、男女の運命の糸。冷えた心に、ほんのりと明かりを灯す、世話物を中心とした珠玉の全7話。
内容説明
夫婦の気持ちのすれ違いを巧みに描いた「冬隣」、江戸に出てきた若い百姓が商人として成功した後に大きなものを失ったことに気づく表題作「あんちゃん」など、江戸を舞台にしながら、現代にも通じる深いテーマの数々を、時代小説の名手が描ききる。冷えた心に、ほんのりと明かりを灯す、珠玉の全七話。
著者等紹介
北原亞以子[キタハラアイコ]
東京都出身。コピーライターなどを経て、昭和44年「ママは知らなかったのよ」で第1回新潮新人賞を受賞し作家としてデビュー。平成元年『深川澪通り木戸番小屋』で第17回泉鏡花文学賞、5年『恋忘れ草』で第109回直木賞、9年『江戸風狂伝』で第36回女流文学賞、17年『夜の明けるまで』で第39回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuka
49
夫婦や兄弟など誰にでも起こりうる物語。時代は江戸だけれど、絆や情はそうそう変わるものではないだろう。幼い頃慕っていた指南所の先生にやっと想いが通じた「帰り花」や最期は惚れた女の側でと、家を捨てて女のもとへやってきた初老の旦那とお妾さんの「草青む」など年齢差恋愛を美しく切り取った話が印象的だった。「草青む」の本妻の本音もよかったし、死んだ後も妾を思い遣る旦那の心遣いも粋だ。江戸の男性は本当にかっこいい。「あんちゃん」はこれぞ人情話だね。どこまでも心がまっすぐで清々しい兄ちゃんと弟の与兵衛、仲直りできたかな。2016/11/05
moonlight
32
男女や親子兄弟の一筋縄ではいかない人間模様を描いた短編が7編。お互いに相手を見限ったはずの夫婦に訪れる小さな心境の変化を描いた『冬隣』、余命わずかな大店の主人が、家族よりも自分を大切にしてくれた愛人のために計らったことが心憎い『草青む』、貧しい農村から江戸へ出て成功した男と兄のほろ苦い再会を描いた表題作が良かった。市井ものとは一味違う、やや込み入った話が多く読むのに時間がかかってしまった。2025/04/14
ふう
25
ほしいのは小さな幸せ。それを大事に温めてつつましやかに生きていきたい…。そんなささやかな願いをもち、不器用だけど健気に生きている人たちの物語です。男でも女でも兄弟でも、相手の弱さがわかると心底人を憎むことができません。人を押しのけることもできないけど、自分の気持ちに嘘をつくこともできない。それでもいい、小さな喜びを受け止められる人がきっと大切なものを見つけられる人だからと北原さんのやさしさが感じられる作品でした。2013/04/24
ほうじ茶子
15
最近、時代小説が気になってまして本屋さんで選んできたこちら7編の短編集。冒頭から引き込まれて読んだ一途な想いの「帰り花」、男と女のどうしようもないやるせなさの漂う「風鈴の鳴りやむ時」に心揺さぶられました。江戸の市井の人たちの悲喜交々…なんだか沁みるなぁと思うので、いろいろ読んでいきます〜2024/03/10
Kira
8
図書館本。七篇収録の短編集。前半の四篇では、対照的な二人の女をストーリーに巧みに織り込んでいる。少女の頃に魅かれた男の面影を追う「帰り花」がとてもよかった。後半の三篇は、幸せを守ろうとする三人の男女の姿を描く。幸福な日々が壊されていく不安におびえる「いつのまにか」が、ハラハラする展開の作品で、読んでいるこちらも不安な気分だった。 2021/09/05