出版社内容情報
昭和46年春、特ダネ記者の弓成亮太は沖縄返還交渉にまつわる密約の存在に勘づく。熾烈なスクープ合戦の中、彼はある女性と…。
内容説明
強大な国家権力とジャーナリズムの全面戦争に沸騰する世論。その時「起訴状」という名の爆弾が炸裂した。「弓成亮太、逮捕する!」。ペンを折られ、苦悩する弓成。スキャンダル記事に心を乱す妻・由里子。弁護団の真摯な励ましが家族を支える。そしてついに、運命の初公判が訪れた―。毎日出版文化賞特別賞受賞の傑作全4巻。
著者等紹介
山崎豊子[ヤマサキトヨコ]
大正13(1924)年、大阪市に生れる。京都女子大学国文科卒業、毎日新聞大阪本社に入社。昭和32年、生家の昆布商を題材にした処女長篇「暖簾」を書下し刊行。翌33年、「花のれん」で第39回直木賞受賞。同年退社、執筆に専念。大阪商人の典型を描いた作風は「船場狂い」「しぶちん」と続き「ぼんち」で大阪府芸術賞受賞。平成3年、第39回菊池寛賞、21年、「運命の人」で第63回毎日出版文化賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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107
外務省機密漏洩事件で逮捕、起訴された弓成。新聞社の支援で法廷闘争に突入。妻が気の毒。記者に対する公務員法の「そそのかし」が問われる初のケース。「クリーンハンドの原則」はこのケースに当てはまる?取材手法をめぐり新聞社に批判が集まる。5人の弁護団は「男女の仲」ではなく「報道の自由」を守ることができるのか?機密のためなら嘘も当たり前(?)の外務官僚はどんな証言をするのか。大学の一般教養で法学を選んだら、モデルとなった西山事件を生の教材として学ぶべき。判決はどうなる?三巻に続く。2019/08/21
ユザキ部長
86
クリーンハンド。それ言っちゃはじまらないんだけど、仕方ない。一国の総理に対してケンカ売ってんだもん。公に出る人は曇りがあってはならない。曇りがない人は居ないので絶対に隠さないとならない。さて、どうなるんだろ?2017/05/04
修一朗
47
第2巻,国家の秘密を知る権利を争点とした裁判。総理大臣が新聞記者を抹殺しようとする[国家権力の欺瞞に対する強い怒り]を描かれる。緊張感漂う法廷現場。得意の緻密でぶ厚い文章,堪能しました。しかし,関心のストーリーに感情移入出来ない。弓成に共感出来なかった。やったことは機密を国民に公にしたことかもしれないが,根っこの動機は自己顕示欲だ。自分の出世のために,危ない橋を渡るのは勝手だが,やってはいけないミスで多くの人を巻き込んだ。3巻へ。2014/04/26
菜穂子
46
実在の人物による実際の事件、裁判に基づいているので当時の政治情勢や事件の真相を知り得た2巻目。事件当時のセンセーショナルな報道だけが頭残っていたのだと言うことに愕然とした。2023/10/26
紫陽花
45
マニアックな法廷でのやり取りが続きます。特に驚いたのは、刑事訴訟法第144条「公務上の秘密と証人資格」の場面。外務省事務官が証人として出廷した際に「公務上の秘密」を盾に証言を保留したところ、裁判所が裁判の場で外務省に電話をかけ、証言の許諾を求めます。なかなか、ここまで描いている小説はないです。勉強になります。2022/01/08