出版社内容情報
日中復興のシンポルとして構想された製鉄所建設だったが、日本企業は中国首脳に翻弄される。日中の間で悩む陸一心が選んだ進路は
内容説明
「宝華、万歳!」「初出銑、万歳!」万雷の拍手と大歓声が湧き起った。七年がかりで完成した日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」の高炉に火が入ったのだ。この瞬間、日中双方にわだかまっていた不信感と憎悪が消え去った。陸一心の胸には、養父・陸徳志の、「お前、いっそのこと日本へ―」という言葉が去来する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
118
丹青の告発により冤罪が解けた主人公はプロジェクトに復帰し、7年がかりで完成した製鉄所の高炉に火が入る。妻に行状を密告される長幸、至る所で盗聴を考慮した上で会話しなければならない政治家たち、4巻は監視社会の怖さが際立っている。本作は日中双方から棄てられた主人公を通して、恐怖や憎しみといった負の感情をひたすら増大させる人間の悲しい本質と、甦らない過去に囚われずにそれを乗り越えて生きることの美しさを描いたとも言えるだろう。「私はこの大地の子です」—彼にとって魂が触れ合った地で誕生した人間の絆は何物にも替え難い。2018/05/12
zero1
104
日中の協力による製鉄所の建設は予定より遅れていたが、どうなる?そして一心は日中どちらの国で暮らすのか?元恋人の決断が泣ける。山崎は亡くなっても作品は残る。戦争の悲劇を忘れてはならない。2019/07/12
Rin
76
[借本]面白かったし読めてよかったと思える物語。家族とは血の繋がりだけではなく、かといって共に過ごした時間だけというものではないのだろう。日本の父も中国の父もまぎれもなく一心の家族なのだから。中国で生きること、日本で生きること。どちらで生きれば幸せといえるものではないだろう。どちらで生きてもきっと苦しめられたり差別を受けたりと苦難はあるはずである。一心たち残留孤児は国に何処までも翻弄されて虐げられてきた。だからこそ、自分を「大地の子」といい、中国で生き抜いていこうと決意した彼らの幸せを願いたくなりました。2019/04/09
おたま
71
ついに最終巻、序破急の急だ。陸一心(松本勝男)の妹・あつ子(張玉花)の危篤、日本の父・松本耕次との父子の確認(この辺りまで涙なくして読めない)、機密漏洩の疑いをかけられ内蒙古へ再び送り込まれ、その疑いが晴れてついに中国と日本との合同プロジェクト・宝華製鉄の完成へ。とてもとても一冊の中には入り切らない濃密な内容を収めている。それだけに大変ドラマチックに物語は進んでいく。最後に陸一心は「私は、この大地の子です」と決意するのだが、ここには万感の思いが詰まっている。きっとこの後に、日中の架け橋として生きるだろう。2021/11/09
HIRO1970
71
⭐️⭐️⭐️大学生時代によみました。2005/01/01