出版社内容情報
陸一心──日本人残留孤児で、中国人の教師に養われて成長した青年のたどる苦難の旅路を文化大革命下の中国を舞台に描く大河小説
内容説明
陸一心の本名は松本勝男。日本人戦争孤児である。日本人ゆえの苦難の日々を経て、彼はようやく日中共同の大プロジェクト「宝華製鉄」建設チームに加えられた。一方、中国に協力を要請された日本の東洋製鉄では、松本耕次を上海事務所長に派遣する。松本はかつて開拓団の一員として満洲に渡り、妻子と生き別れになっていた…。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
110
苦難を経て日中共同プロジェクトの建設チームに加えられた主人公。一方、日本からは実父が上海事務所長として派遣される。更には日本人という理由で主人公から離れたかつての恋人と再会というドラマティックな展開や日中の価値観を浮き彫りにする交渉模様など、2巻になってようやく従来の著者らしい物語になってきたように思う。中国人が見せる狡猾さからも共産主義の闇ともいうべき激しい格差が垣間見れるし、その強者と弱者からなる社会区分は宿命的に1巻冒頭の吊し上げにも結びつく。日本軍の蛮行の様子には著者の怒りが存分に込められている。2018/05/10
zero1
86
日中合作ドラマでは削除された政治面が描かれる第二巻。労働改造所に入れられた陸一心。養父による命がけの訴えは涙、涙。書きたいことは山ほどあるが、読んだ記録。2019/07/12
Rin
75
[借本]助かってほしい、読みながら祈りたくなる。それほどに追い詰められていく一心の環境。なんとしてでも息子を救いたいと、凄まじいほどの気迫で行動を起こす陸徳志。どんな状況であっても信じることのできる相手がいることの素晴らしさ。奇跡のような人と人との繋がりがそこにはあった。新たな環境に身を置くことになった一心だけれども、日本の血にはきっとこれからも苦しめ、迷わされていくはず。中国と日本、どちらの国にも苦しめられる一心。そして、日本国と中国の関係の変化。まだまだ激動の予感がするので、すぐに次に入ります。2019/03/24
青色夜ふかし
72
「大地の子だけは私は命を懸けて書いてまいりました」徹底した取材に基づいた歴史の教科書。 様々なテーマが重層的に描かれる。 ①戦争を背景とした中国の反日感情「小日本鬼子シャオリーベンクイツ」 ②文化大革命、労働改造所と呼ばれる収容所での悲惨な状況。毛沢東が進め中国社会が混乱した。2018/07/23
おたま
68
文革が周恩来、毛沢東の死去とともに収束し、その後、鄧小平(本の中では鄧平化)や華国鋒(同・夏国鋒)の改革開放の時代へということが背景にある。その中で、陸一心は労改送りから復権し、重工業部計画司になる。そして始まる日中の合同プロジェクト宝華製鉄所の建設。そこに一心も参加していくことになる。日本側は東洋製鉄が中心となった企業群が引き受けるが、その東洋製鉄の木更津工場から、一心(松本勝男)の本当の父である松本耕次が参加してくる。すぐ近くまで(会話を交わすぐらい)親子は近づくが、まだお互いに本当の事は知らない。2021/10/14