内容説明
源氏物語には795首の和歌が登場する。ここぞ、というときの和歌は、恋のゆくえを大きく左右する。心の結晶である和歌を、小石のように飛び越えてしまうのではなく、氷砂糖をなめるように味わったならば、源氏物語の世界はさらに豊かな表情を見せてくれるだろう。千年の時を越え、「万智訳」でよみがえる愛の物語。
目次
和歌は心の結晶
あなたのために
雨夜の品定め
逃げる女
末摘花のボキャ貧
ああ、からころも
文明と恋愛
恋の分かれ道
光源氏の下心
朧月夜が一番〔ほか〕
著者等紹介
俵万智[タワラマチ]
1962年(昭和37年)、大阪府生まれ。85年、早稲田大学第一文学部卒業。86年、「八月の朝」で第32回角川短歌賞受賞。87年、歌集『サラダ記念日』を刊行し、同書で第32回現代歌人協会賞を受賞。以後、エッセイ、評論、紀行など幅広い執筆活動を行ない、96年より読売歌壇の選者を務める。歌集に『かぜのてのひら』『チョコレート革命』、小説に『トリアングル』など、著書多数。2004年、『愛する源氏物語』で第14回紫式部文学賞、2007年、歌集『プーさんの鼻』で第11回若山牧水賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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昼寝ねこ
93
2024年1月7日から紫式部の大河ドラマが始まる😄源氏物語の訳本はいくつか読んだがイマイチ不満だったのは作中の和歌を和歌として理解できなかったこと。解説文で意味はわかっても、それは和歌の味わいとは違う。この本は源氏物語の和歌を現代の和歌に読み直してあるので、そのままストンと理解できる。これで源氏物語も怖くないぞ😆万智さんありがとう🙏2024/01/05
アルピニア
68
源氏物語に登場する和歌を取り上げて、俵さんによる口語短歌訳(万智訳)とともに解説した書。歌に込められた思いがいきいきと伝わってきて、この物語において歌がいかに重要な役割を果たしているかを実感する。そしてこれらの歌すべて(795首)を紫式部が作ったということに改めて驚く。大勢の登場人物それぞれの性格を上手下手も含めて歌い分け、さらに経時的な心情の変化や成長まで反映させているのだから、畏敬の念を抱いてしまう。俵さんの人物評もとても痛快だった。特に、薫に対する手厳しい言葉には、ニヤリとしながら頷いてしまった。 2020/02/24
フリージア
53
源氏物語の和歌をたどりながら物語を解説してくれる。物語に沿って、和歌を万智さんが現代短歌に訳しており、さらに状況や登場人物の感情を説明してくれてとても理解しやすかった。解りにくい宇治十帖の薫と匂宮も良くわかった。カバーは中島潔氏。万智さんは氏の描いた紫の上に心奪われたそうだ。そして解説は東直子氏で、「紫式部が登場人物に宿した愛は(略)和歌という定型の中で凝縮された言葉として、永遠に生き続けている」とあった。2021/03/23
なお
46
平安貴族の殿方にとって、話したり顔を見る事が中々出来ない姫君達。どんな人なのか贈り合う和歌によって想像するしかない。歌の上手や筆跡は勿論、書かれる紙や薫きしめた香、添える花、返歌のタイミング、全てにセンスが問われる。七九五首の和歌が登場する『源氏物語』。俵万智さんが分かり易い短歌にし、その背景も含めて解説する。紫式部はそれぞれの姫君の性質や魅力を見事に歌の違いで表現していた。やんわり拒んだり、直接言えない真意を和歌だからこそ伝えられたりもする。『源氏物語』に入り込み、光源氏に怒ったりする万智さんが楽しい。2024/02/29
けやき
37
【再読】俵万智さんによる源氏物語の和歌に焦点をあてた入門エッセイ。改めて源氏物語の凄さを知ったよい読書でした。2025/05/16