文春文庫
先生のあさがお

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  • サイズ 文庫判/ページ数 198p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167545208
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

見知らぬ女からもらった朝顔の種。育てるうちに呼び起こされる先輩医師の記憶。妻と分かち合う静かな日常を静謐な筆致で描く3作品。

山の自然のうつろい、生と死を見つめる作品集

見知らぬ女からもらった朝顔の種。育てるうちに呼び起こされる先輩医師の記憶。妻と分かち合う静かな日常を静謐な筆致で描く3作品。

内容説明

名も素性も想い起こせぬ女から手渡された「先生のあさがお」の種。あさがおの先生といえば、四年前に逝った先輩医師しかいないはずだが…。「わたし」をかたどる記憶のあいまいさにただ立ちつくす―。他者の死に関わる医業で疲弊し、かろうじて生きのびたいま、妻と分かち合う平凡で危うい日常を描く作品集。

著者等紹介

南木佳士[ナギケイシ]
1951年、群馬県に生れる。現在、長野県佐久市に住み、総合病院に内科医として勤めつつ、地道な創作活動を続けている。81年、難民医療日本チームに加わり、タイ・カンボジア国境に赴く。同地で「破水」の第53回文學界新人賞受賞を知る。89年、「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞。「草すべり その他の短篇」で、2008年、第36回泉鏡花文学賞を、翌09年、第59回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

313
表題作を含む3つの中篇からなる。それは一見したところ随想か、さもなくば私小説に見えかねない。しかし、これらはいずれも小説である。何故なら、そこには紛れもなく小説空間が構成されており、そこに小説の時間が流れるからだ。3つの中で唯一目に見える形で仮構されているのが「先生のあさがお」であり、これが表題にもなっている。しかし、私にはむしろ、さりげなく語られる前半の2作の方が好ましい。一時期の衰弱を乗り越えた後の精神と行動の営為が、時にはユーモラスにさえ感じられるまでの筆致になったことを南木の読者として喜びたい。2016/01/12

NAO

67
南木佳士の作品は神経が細く危うさをだましだまして生きている医者(自分)を中心に据えた話が多かったが、この本はちょっと違う面が。不調をだましだましなんとか生きてきたことにいくばくかの自信を得て夫が元気に暮らせば、夫の不調を支え続けることに存在意義を見い出していた妻が不調になる。そんな妻を、夫は静かに見つめ、そっと手をさし伸ばす。すでに亡くなった人、過去に出会った人、彼らを身近に感じながら、静かに、ゆっくり生きてゆく。2020/09/24

chimako

50
『医学生』のようなピュアな読み心地は無いが、人生の山や谷を越えてきたある種のしぶとさが感じられる。放り出しれたような読後感を鷲田清一氏の解説が拾い上げてくれた。在と不在のあやふや。有るものが突如としてなくなる暴力にも似た理不尽。作者の医者と言う職業はそのただ中にあって神経を病むには十分過ぎる。語っているのか、騙っているのか。人の様々な「かたり」をやり過ごす知恵。そして夫婦の「とても静かな、食うか、食われるか」の関係。食うのはイヤだし食われるのはもっとイヤだな。気持ちがささくれ立った朝に読了。2015/01/09

piro

38
『熊出没注意』、『白い花の木の下』と表題作の短編3編。前2編はエッセイの様。そして表題作は目の前の現実と曖昧な記憶が交錯するちょっと不思議な感覚でした。かつて患った心の病を何とか克服し、信州の美しい四季の移ろいの中で騙し騙し人生の終盤を迎える。どの作品も死の気配が身近にありながらも、しぶとく歳を重ねる姿にリアルな人生が感じられます。そして老年に近づいた夫婦の静かな情愛が優しく、微笑ましい作品でもありました。2024/12/20

ちゅんさん

29
私は南木佳士が好きなのでいつもと同じような話はとても読んでいて落ち着く。この人とは長い付き合いになると思います。2019/05/26

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