内容説明
パレ・ロワイヤルの灯、眠りについた東京タワー、掌で揺らめく花背の蛍、高原の霧に溶けてゆく花火、冬の観覧車、車窓に浮かぶ街の灯…。イルミネーションに照らされて女たちの恋が浮かび上がる。恋の闇のなかで、もがきながらも、一筋の光を見いだして前に進もうとする女性たちの喪失と再生の物語。
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952年、東京生まれ。成蹊大学文学部卒業。89年、「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編部門)受賞。96年『恋』で第114回直木賞、98年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
77
かねてより恋愛小説の醍醐味は「叶わない・障害のある」恋にある、と明言している私の大好物である不倫テーマ小説。現代だと、身分差だとか年齢差だとかはあまり障害にならなくて、どうしても悲恋と言うと不倫になってしまうので。読んでいる間中、胸がときめきっぱなしの短編集でした。恋している相手の体温やしっとりとした肌の感触までも伝わってきそうな・・・。個人的には表題作と恋愛相手が死に至ってしまう『冬の観覧車』がお気に入り。「心はこんなに通い合っている。少し先に逝くだけのこと」にはもらい泣きさせられました。2015/03/27
かんらんしゃ🎡
49
★義理と人情を秤にかけりゃ義理が重たい男の世界~っと。恋にあっても男は義理を通す。この時、義理は世間体と言い換えてもいい。女は情に生きる。世に別れの惨劇はここに起因する。★作中の女性たちも濃密な恋に溺れ、悲劇に酔いしれる。女性読者におもねた設定にちょっと辟易してしまった。これも恋愛観の違いなんだろうな。2018/08/02
いしかわ
48
どっぷりとした愛の物語は苦手だったけれど、この小説では何故か すんなりと世界に入る事が出来た。共感をしたり、実際に同じ経験があったりと自分と重ねたときに、2〜3年前では考えられない程に私も大人に、そして「女」になったのだなぁとしみじみ思う。艶っぽい話が多かったけれど、なにも見えなくなって聞こえなくなって、真っ直ぐ欲望に向かっていく 女性たちは 輝いて見える。2014/05/13
じいじ
35
6短編どれも不倫の話。「水底の光」は、W不倫。互いに冷めた家庭情況での逢瀬は自堕落、双方離婚が先では・・と思う。こんな自虐的な気分下での情交には共感できない。また、コウモリを「カワイイ、飼いたい」と言う女は好きになれない。しかし、傍観する立場では小池さんの文章力の上手さで愉しめた。「冬の観覧車」が好きだ。不倫でも共感できる。男の誠実さ、娘への愛情・・に好感が持てる。離婚歴の女の謙虚さ、ひた向きな気持ちが切なく愛しい。不倫の恋は、いやが上にも切ないものだ。小池真理子は、男と女の不条理の恋を描くのが上手い。2015/03/12
ぐうぐう
30
6作の短編には、ドラマよりも想いが描かれている。想いの強さを前にして、ストーリーは希薄にならざるを得ない。世間で言われる不倫が共通の関係性として背景にあるが、その関係性の是非を問う小説でないことは明らかであり、故に下世話な倫理に陥らず(登場人物の一人は言う。「誰も否定できない、正しい当たり前のことを当たり前の顔をして口にして、したり顔をする人間が、わたしは昔から苦手だった。この種の人間は、人の心の中に生まれる曖昧な感情を理解できないばかりか、強引に整理して、整理しきれないとわかると、(つづく)2021/01/18