内容説明
美しい時を重ねて知る愛の真実。大人の女であればこその切なくもひたむきな恋心を謳いあげた『時の銀河』。愛しい人とわかちあう時の輝き、そして豊かな人生の味わいと愛の深奥を温かな眼差しで描く『冬の花火』。作家二人が、「美しい時間」をテーマに豪華な競演。時を経た今だからこそ味わえる極上の小説たち二篇。
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952年、東京生まれ。成蹊大学文学部卒業。89年、「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編部門)受賞。96年『恋』で第114回直木賞、98年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞を受賞
村上龍[ムラカミリュウ]
1952年、長崎県佐世保市生まれ。武蔵野美術大学中退。大学在学中の76年に『限りなく透明に近いブルー』で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。81年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、98年に『イン・ザ・ミソスープ』で読売文学賞、2000年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、05年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夢追人009
150
小池真理子さんと村上龍さんが「美しい時間」をテーマに競演した大人の小説の味わいが色濃い贅沢な中編集です。本書は女性と男性の視点の違いはあるもののどちらも根底に「大人の男女の愛」を感じますし人生経験が豊かな年代の読者の心により深く響くのではないかなと思いますね。『時の銀河』小池真理子著:長い間不倫関係にあった男の事故死の後に彼の妻と知り会って友情を深めるなんて心が休まりますね。『冬の花火』村上龍著:モナコのカジノで一夜に1億円も大勝ちした老人が自殺した理由とは?熟年夫婦の皆さまへ二人で冬の花火をご覧下さい。2020/01/02
しゅう
44
小池真理子のまえがきによると、ネスレのコーヒーのキャンペーンで、『美しい時間』と題し、50代の男女をテーマにした小説を書いてほしいという依頼があったそうだ。小池真理子は『時の銀河』、村上龍は『冬の花火』というタイトルでそれぞれ書いている。私は小池真理子を読んだ記憶がないのでこれが初読みだと思うが、『時の銀河』はかなり面白かった。50代の女性ふたり、ともに愛した郷という名の男に思いを馳せる。ひとりは妻で、もうひとりは愛人という関係で。郷を失った喪失感がふたりを結び付ける。奇妙な友情物語。2025/02/23
rueshё
43
バープレにもらった。終わり方秀逸。こうでなきゃ。2007/11/18
キジネコ
43
ある成功者の自死。彼を知る人々の心に刻まれる疑問符。生涯を軽やかに疾走し、欲するモノの全てを手にし、得る都度こぼれ落ちた大切なものがあった・・・ そのことに、男は気づいてしまう。「本当から どのくらい離れてしまったのか」と自問する男の最期の選択が自死・・・洗練と優雅さに満ちた都会の寓話、ロマンチックだけど、作家らしいビターな読み物だねえと、高をくくっておりましたら最終ページでキツイ一撃。上質、本物で満たすスタイルの空虚、独特で辛辣な風刺が物語に込められている様に読めたのは、偏屈に過ぎるだろうか?冬の花火。2014/05/20
橘
41
面白かったです。登場人物の年齢が上だったので、大人のお話だ…と思いましたが、わたしもこんな風に年を重ねられたらいいなと思いました。小池真理子さんのお話の、「いったん溶けおうた男女に、金輪際、別れなんぞあらへんのや。」という台詞が残ります。人と人は水のようで、いったん溶け合ったら、二度と分離することはできないと思うと、誰かを好きになるっていいなと感じます。村上龍さんのお話は男性の主人公だったので共感は出来ませんでしたが、こちらも良かったです。どちらのお話も品があって好きでした。2016/12/09