文春文庫
ブリューゲルへの旅

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  • サイズ 文庫判/ページ数 217p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167523138
  • NDC分類 723.359
  • Cコード C0195

内容説明

1966年、ウィーン。41歳の著者は憂鬱をもてあましていた。そして「雪中の狩人」に出会う。絵が「ここがお前の帰っていくべき場所だ」と語りかけてくる。16世紀フランドル地方の謎の民衆画家、ブリューゲルの不思議な作品群をたどりつつ、若き日の懊悩、模索、西洋文明への憧憬と決別を語り尽くした名著。中野流人生哲学の源。

目次


狩人
狂女
予感
麦刈り
室内
自然
民家
現実


乾草の季節
いざり

傲慢
イカルス
絞首台にかささぎのいる風景
浮きつつ遠く

著者等紹介

中野孝次[ナカノコウジ]
大正14(1925)年、千葉県に生れる。東京大学文学部卒業。カフカ、ノサックなど現代ドイツ文学の翻訳紹介、日本文学の批評、小説、エッセイなど多彩な執筆活動をつづける。堅実な作風で、現代社会にいかに生きるかを真摯に問う作品には高い評価がよせられ、表現する者としての責任を忘れぬ作家生活は深く信頼されている。主な著書に、『ブリューゲルへの旅』(日本エッセイスト・クラブ賞)、『麦熟るる日に』(平林たい子賞)、『ハラスのいた日々』(新田次郎賞)など多数
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感想・レビュー

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まーくん

37
「雪中の狩人」、「バベルの塔」などで知られる画家ブリューゲル。独文学者の著者がウイーンでの憂鬱な日々に出会ったブリューゲルに強く惹かれる。後年、再び欧州へ旅し、これらの作品を訪ね歩く。祖母の住まう北関東の農村と自分の育った東京近郊の町。貧しくも大地に根を下ろした農民の生活と片や都会の教養主義への憧れ。自らの精神的葛藤を背景にブリューゲルの作品に向き合う。そこには祖母の姿にも通じる厳しくも逞しい農村の生活を感じ、深く心を寄せながらも、本音では粗野なもの、鈍重なものへの嫌悪を抑えられない自分を見る。2018/10/06

ネコタ

24
1966年、ウィーン美術史美術館で著者はブリューゲルの絵と対面した。それ以来その魅力にひきこまれ、世界各地のブリューゲルの絵を見に行く。単純な絵の解説の本かと思っていたが、そうではなく、ブリューゲルの絵を通じて自分の人生を振り返るなど、裏表紙によると中野流人生哲学の源。なので内容はちょっとというかかなり難しく感じた。そもそも漢字が難しくて読めない漢字がたくさんあった。ブリューゲルのバベルの塔は2枚ある。2017/09/29

A.T

21
16世紀 イタリアルネサンスの影響を受けながら、自由な世界観を追求し続けた画家 ブリューゲルの作品を制作順に追う。ブリューゲルと著者中野孝次の生涯を、中世ネーデルランドと昭和40年代日本をリンクさせながら描く。引きこまれました。時代や背景が違っていて人が通じ合うためにはここまで洞察が深くないとウソなのかも。ブリューゲルが描く剽軽者たちが、実は体制派への反感や反動の表現ということの重みを一つずつ、細かく解きほぐしていく。これからも何度も読み返したくなる1冊でした。2018/01/30

kthyk

20
著者は60年代、ブリューゲルの絵画に関心を持ちヨーロッパに行く、1976年出版。出版当初の評はかんばしくない。当時の蒼々たる評論家、絵画は、その意味に関心を持っていた。ボクの関心は1560年代というパッラーディオとの同時代、ブリューゲルの絵画のありのままの世界、そのポスト・ルネサンス的表現はどこからか。「雪中の東方三賢王の礼拝」中世風の人間を超越する価値体系も崇高性も存在しない、これが人間の生なのだ。ブリューゲルには同時代、すでに、人間の生をそうゆうものとして限定し、肯定させるに足る何かがあったのだ。ー>2020/12/26

どんぐり

10
ブリューゲルの絵に投影した思索者でツーリストの内面的な独白。1976年の作品なので、この時代の抽象的で過剰な観念世界が先走る。長塚節や野間宏の文学表現などを引用しながらブリューゲルの絵の「民衆への強い執着」を評する文章があったりする。日本のものをもって、西洋のことを論じることが果たして真っ当なことなのか。今の時代に読むには、この本はいささか主観的な偏りがある。2012/10/08

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