出版社内容情報
広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカで暮すエスキモーや白人たちの生活を独特の味わい深い文章で描くエッセイ集
内容説明
広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカ。1978年に初めて降り立った時から、その美しくも厳しい自然と動物たちの生き様を写真に撮る日々。その中で出会ったアラスカ先住民族の人々や開拓時代にやってきた白人たちの生と死が隣り合わせの生活を、静かでかつ味わい深い言葉で綴る33篇を収録。
目次
新しい旅
赤い絶壁の入り江
北国の秋
春の知らせ
オオカミ
ガラパゴスから
オールドクロウ
ザルツブルクから
アーミッシュの人びと
坂本直行さんのこと〔ほか〕
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
636
16歳の時に単身で2カ月間のアメリカ放浪、その後も(おそらくはまだ10代で)アラスカのシシュマレフ村での3カ月の生活体験。文体の優しさと繊細さからすれば、およそそんな大胆なことをしそうには見えない。ところが、彼の中には、そうした冒険心と優しさとが幸福な一致の内に共存する。それが冒険家ではない冒険家、星野道夫の特質だろう。「台本のない物語を生きる」ーずっとそのようにしてきたのが彼の生き方なのだ。アラスカの圧倒的な自然と、そこでの人々の暮らしを、まだ見ぬ郷愁と圧倒的な透明感とで描き出しているのが本書である。2014/11/26
しんごろ
442
脳内で、壮大なアラスカの自然の風景が、スローモーションのように、そして、アラスカの人々の温かさと人柄がイメージできますね。文章からも、星野道夫さんの人柄も見えた気がしました。この本でアラスカに旅をした気分を味わえる素敵なエッセイでした。2019/02/03
SJW
315
レコーダーの録画済番組を見ていたら、作年夏に放映された「没後20年 星野道夫 旅をする本」を偶然にも見つけた。その始まりは、「それは一本の線から始まりました。不思議な旅の物語。この本に旅をさせてやってください。」でいきなり何だろうと引き込まれた。とある旅行者が星野さんの著書「旅をする木」のタイトルの「木」に横線を入れて「本」にして、その裏表紙に氏名と旅先を書き込み、次の旅人に渡していくというものだ。結局、10人の旅人の手に渡り、スペイン、タイ、ヨーロッパ、北極、南極 の12万km 地球3周分を旅したと2017/11/28
あきら
250
素晴らしい。 -毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている- 自分と、自分の周りのことばかりの自分に、ぴったりの一冊でした。 心に余裕が必要だな。 2021/10/05
rico
242
今、この瞬間にもオーロラはゆらめき、カリブーの群れが雪原を渡り、マッキンレーは白く輝いているのだろうか。厳しい自然と対峙して生きる人々は強く暖かい。でもたとえ、見るものがいなくても極北の地の季節はめぐり、様々な表情を見せる。時に神々しく時に美しく。1つぶのトウヒの種がめぐりゆく姿に想いを馳せる表題作「旅をする木」。生々流転。文明がいかに自然と人を隔てようと、私たちは宇宙の小さな一部であることにかわりはない。星野さんの文章はそんなことを思い出させてくれる。いつか見た満天の星空。私もいずれはそこに還るのだと。2021/10/30