内容説明
戦後日本の代表的な作家六人の短編小説を、村上春樹さんがまったく新しい視点から読み解く画期的な試みです。「吉行淳之介の不器用さの魅力」「安岡章太郎の作為について」「丸谷才一と変身術」…。自らの創作の秘訣も明かしながら論じる刺激いっぱいの読書案内。
目次
吉行淳之介「水の畔り」
小島信夫「馬」
安岡章太郎「ガラスの靴」
庄野潤三「静物」
丸谷才一「樹影譚」
長谷川四郎「阿久正の話」
著者等紹介
村上春樹[ムラカミハルキ]
1949年1月生れ。早稲田大学文学部演劇科卒業。79年「風の歌を聴け」で群像新人賞、82年「羊をめぐる冒険」で野間文芸新人賞、85年「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」で谷崎潤一郎賞、96年「ねじまき鳥クロニクル」で読売文学賞を受ける
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
153
6人の作家の短編小説を取り上げて、その読み方をじっくりと語ってくれます。一つの参考になる読み方でこのような読み方も作品によってはあるということを教えてくれます。最後にある読書の手引きも参考になります。ただ残念なのは村上さんも断っていますが、出版社の問題だとは思いますが原文を入れてくれたらという気がしました。まあ版権などの問題があるのでしょうが。2016/01/16
buchipanda3
118
著者による短編小説の読み解きを披露した評論集。紹介された作品は意外にもすべて国内小説。自らプロの書評家ではないという前置きをした上で、自由な語り口で作家の視点からの気付きがふんだんに語られていた。その指摘は大胆なもので、技巧的な欠点も示すが、むしろそれが作品にどう良い効果がもたらされているかが切々と述べられる。また、小説家が小説家の創作による煩悶したであろう心情を思い量り、熱のこもった口調になっていくのも印象的だった。取り上げられた作品はどれも未読なので、いずれ著者の仮説を頭に置いて読んでみたい。2020/08/04
ケイ
71
春樹氏が中高生のために書いたのかと思ったが、これは大学生、院生レベルの内容だ。「第三の新人」六人の作家の短編を一つずつ紹介している。一作も読んだ事がなく、淳之介以外は作家の名前すらも知らない。紹介作品は未読のまま読む。淳之介のわざと外したり繰り返される文体に興味を覚えた。長谷川四郎に関しては、最後に持ってきていて割いた頁が最も多い。ここで、作家は本当の事を言うとは限らないと春樹氏は断っているが、この章にこそ春樹氏の本音が最も現れているのでは。ノモンハンに繋がるきっかけに思える。2014/01/08
harass
61
日本文学の短編をつかっての著者による講義をまとめたもの。「第三の新人」と言われる文学者たちの作品のみを取り上げるのが面白い。実作者である著者が非常に抽象的な細かい話をしているが興味深く感じた。著者の作品はあまり読んでいないがなるほどと思える指摘などがある。著者らしいなと。自分は「静物」ぐらいしか読んでいないのでまだまだ読むべき作品があるなと思った。図書館本。2016/07/02
AICHAN
43
図書館本。再読。私は若くないが、気になってまたこの本を手にした。なぜ気になったかというと、短編にこそ小説のエッセンスが詰まっていると考えているし、村上春樹も秀逸な短編をたくさん書いているので、短編小説について何か知識が得られるかと思ったのだ。再読してみたら内容はもう忘れていて新鮮だった。1991年から1993年にかけて春樹さんはアメリカ・プリンストン大学で教鞭をとった。そのときにテキストにした日本の短編小説を論評したのがこの本。深読みがすぎるなという論評もあった。2022/05/16
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