出版社内容情報
築地の旅篭で女一人男二人の心中と思われる死体が発見された。新聞社の探訪員と犯人探しに乗り出した元旗本の過去が明らかに……
内容説明
明治8年、築地の旅篭に宿泊した女一人、男二人の死体が発見された。元士族、板前、飲み屋の女将という奇妙な三人づれ。元旗本の指物師は事件に遭遇したのが義弟だったことから、新聞社の探訪員と共にその死の謎を追って、江戸から明治に変わった東京を奔走する。時代の波に翻弄される人々の哀歓を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
8
中・短編3話を収録。中編の表題作が格別面白かった。明治8年、築地の旅籠で客の男二人、女一人が死体で発見される。事件は服毒自殺として処理されるが、死んだ男の一人が義理の妹の夫だったことから中年の指物師が事件を探ることに。捕物風に始まるこの物語、指物師の男がとても魅力的なキャラクターで(実在の人物がモデルです)、しかも読み進むほどに明らかになる前歴がすごかった。2019/11/08
あいちょ。
3
図書館。 短編集。 ・残映 ・影男 ・供先割り 2024/03/18
wasabi
3
イナセな旦那、しかも実在した人物を据えて無闇に引き伸ばさないから「残映」がある。元南町奉行が大政奉還の後に指物師の転身。旗本から職人になんて荒唐無稽が過ぎやしないかと思っていたら、解説によれば記録に残る人物らしい。我われ庶民は権力者を嫌厭するが、その実庶民に溶け込んで振る舞いながらも世襲の権力を有する者に憧れる。水戸黄門も遠山の金さんも暴れん坊将軍も、最後には身分を披瀝するからこそカタルシスが得られるのだ。2014/03/03
ぺしみち
2
「残映」がよかった。2017/11/09
はちみつ
1
過渡期の生き方について考えさせられました。平成から令和に、消費税8%が10%になどという変化の比ではありません、花は桜木人は武士という言葉がありますが、武士ではなくなった後の生き方、それも要職にあった人物の転身の鮮やかさ。時代の物差しで世を見ることを主人公は潔く、訴えます。あまり深く考えたことがなかった明治期に入ってからの内乱の意味を ここでしっかり考えるきっかけになりました。表題作の他二編も難しい時代だからできた物語だと思いました。『供先割り』の「うちお殿様」の佇まいの美しいこと・・・2020/02/14