出版社内容情報
歴史探偵の異名をとる著者にとって漱石先生は義理の祖父である。漱石についてのよもやま話、ちょっといい話満載。新田次郎文学賞
内容説明
動乱の昭和の原点は、明治の中でも日露戦争以後十年の時代に求められる。その歴史の転換点を小説家として生きたのが夏目漱石であった。漱石の義理の孫にあたる歴史研究家の著者が、知られざるエピソードを発掘しながら、文豪の生きた時代と、文明批評家としての彼の側面を、ユーモラスな語り口で綴った新田次郎文学賞受賞作。
目次
第1話 「べらんめえ」と「なもし」
第2話 漢学を好んだこと
第3話 ロンドンの憂鬱
第4話 恋猫や主人は心地例ならず
第5話 ホームドラマの主人
第6話 ストレイ・シープ
第7話 銀杏返しの女たち
第8話 教師として師として
第9話 汽車とビールと博覧会
第10話 ある日の漱石山房
第11章 生涯に三度のバンザイ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙@新潮部
78
「日本のいちばん長い日」を書いた半藤一利さんは夏目漱石の長女の娘と結婚しています。第一話「坊っちゃん」の話からとても興味深いです。「坊っちゃん」のモデルって漱石自身だとずっと思っていたのですが弘中先生という人がモデルです。そして、家に伝わる「坊っちゃん」の本には小説の余白部分にびっしりと赤シャツのモデルの横地先生とその弘中先生が書き込みしたものがあったそうです。小説に出てくるエピソードの実態がわかるものでもしそれを読むことができれば「坊っちゃん」を10倍楽しめそうです。見てみたいなあ。2020/12/03
クプクプ
34
父から借りて読みました。半藤一利さんの本は初めて読みました。力の抜けた、非常に落ち着いたエッセイでした。鏡子夫人の秘密は楽しかったです。風呂の普及や路面電車の話、東京が都ではなかった頃の話など面白かったです。一番印象に残ったのは「吾輩は猫である」に出てきた相撲のシーンで「土俵の真ん中で両者がっぷりに組んでいて、全く動いていないのに、力士の呼吸は乱れている」、これが電話など文明の発達で、何もしていなくても確実に疲れは出る。その話に共感しました。半藤さんはまだ生きて漱石山房記念館で講演しています。2018/11/29
saga
33
【再読】漱石の孫の夫が執筆したということで興味を持った。著者も書いているが、決して堅苦しい漱石論ではなく、漱石に関するエピソードを楽しめた。『続・漱石先生ぞな、もし』も持っていたはずなのだが見当たらない (;o;)2018/12/12
とみやん📖
18
漱石好きにはたまらない本だと思う。 あいにく、私は、三四郎、こころ、草枕くらいしか、読んだことがなく、吾が輩は猫であるは子どものころ、読みかけでストップしてしまった。なので本来のおもしろさを十分に味わえていないのだろうが、それでも退屈しなかった。野分も随分この本で紹介されていた。歴史探偵の自認のとおり、明治末期の事情を学ぶこともでき、満足。2019/10/30
RASCAL
17
反骨の歴史家、半藤一利さんの漱石本。この本を知ったきっかけは宮崎駿さんとの対談本「腰抜け愛国談義」、半藤さんって、漱石の縁戚(奥様が漱石の長女の娘)なんですね。晩年の義祖母と面識があったそうで、興味深いです。漱石本なのですが、歴史家らしく近代史的な視点で書かれていて面白い。「三四郎」「草枕」再読してみます。2016/01/01