出版社内容情報
旅先で7年ぶりに再会した男女。冷めた大人の孤独と狡猾さが、お互いを探り合う会話に満ちた表題作を含むあざやかな傑作短篇集。
内容説明
世間に注目される新進の造花デザイナーとなった美登里は、仕事で訪れた札幌で昔の男と再会する。空港に向うタクシーの中、男は美登里の手を握った…冷めた大人の孤独と狡猾さが会話の中に満ちる表題作、古都に住む年下の男との甘美な恋愛とその終焉までを描いた「京都まで」の直木賞受賞二作品を含む、鮮やかな傑作短編集。
著者等紹介
林真理子[ハヤシマリコ]
1954(昭和29)年、山梨県に生まれる。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍。82年のエッセイ集「ルンルンを買っておうちに帰ろう」がベストセラーとなる。86年「最終便に間に合えば」「京都まで」で第94回直木賞を受賞。95年「白蓮れんれん」で第8回柴田錬三郎賞、98年「みんなの秘密」で第32回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
168
直木賞】著者の作品を拝読する前に、テレビで見すぎて読む機会を今日まで延ばしてきた。本作品も先に英語で読んで、微妙な心の揺れを理解できなかったので日本語で再読中。初めっから作品を拝読していれば、すごく好感を持ったと思う。作品と人となりが独立していることの才能を感じる。2014/05/10
もぐたん
68
まるで外国の映画を観ているような、独特の雰囲気のある作風。嫉妬や独占欲を刺激するような会話や、いささか愚かしく見えるほどの男女のそれぞれのプライド、時代を感じさせるキーワードさえもかえって新鮮。懐かしい人も、そうでない人も、バブル時代の感覚にひと時どっぷり浸かれる。あの時代だからこそ生まれた名作だと思う。★★★★☆2023/08/13
びす男
65
女性の繊細さ、視線のゆらぎ、そういったものを上手にすくい取る作家だなと感じた。もちろん、本当に女性がそう感じているかは分からないけれど。大人の恋には欲があり、見栄があり、駆け引きがある。時間、仕事、世間体、そうした障害物の狭間を縫うようにして、登場人物たちは恋愛を楽しんでいる。表題に「最終便」とあるように、彼女たちは飛行機に乗って旅や仕事をこなすような、いわゆる自立した大人だ。そのことが彼女らの立場を複雑にし、物語を面白くしているのだろう。2015/07/24
hit4papa
57
二十代後半から三十代にかけての女性が主役の短編集です。どの作品も女性のスイッチの切り替えの早さが上手く表現されています。しょーもない男性とそいつらを精神的にバッサリしたい女性のお話しで、どこか著者の怨念のようなものを感じます。発表年から女性の感性が80年代ぽくはありますね。名の知れたクリエイターが旅先で過去の男と再会するタイトル作。結婚生活を経て妻が夫をうざく感じ始める時「てるてる坊主」。ともに男の本質をついていて耳が痛くなるお話しです。著者の言動が好きではありませんが、読みやすい文章です。【直木賞】2018/03/21
June
37
直木賞受賞作を含む短編集5編。皮肉を感じる一冊。「最終便に間に合えば」別れた女に7年ぶりに再会した男は、付き合っていた頃は邪険だったくせに、今夜は執着があからさま。最終便に間に合うかどうか、空港へ向かうタクシーの中での男と女の駆け引き、滑稽だ。「エンジェルのペン」小説家の女は男に愛撫されているその時もこれをどう描写しようか頭を巡らす、面白い。友達や母親、恋人のことを書いてしまう自分に嫌気がさすが、それでも編集者は書けという。これは誇張された話だか、作家にはこんな面もあるんだろうなあ。2016/05/13