文春文庫<br> 青桐

文春文庫
青桐

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  • サイズ 文庫判/ページ数 235p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784167465018
  • NDC分類 913.6

出版社内容情報

乳癌に罹りながら、医療を拒む叔母とそれを看取る姪。梧桐の繁る北陸の旧家で亡びてゆく肉体と蘇る心の交叉を描く芥川賞受賞作品

内容説明

乳癌にかかりながら、一切の医療をこばんで、叔母は逝った。その死を受容する姿を見つめるうち、姪の心にあった叔母へのわだかまりが消えてゆく。そして、精神の浄化をおぼえる彼女におとずれたものは。1本の青桐が繁る北陸の旧家での、滅びてゆく肉体と蘇る心の交叉を描く魂のドラマ。芥川賞受賞作品。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

195
第92回(1984年)芥川賞。 昭和の雪深い裏日本で暮らす充江の 心の襞を 心の揺れを 丁寧に書き込んだ作品で ある。叔母さんの癌をめぐる 充江と史郎の 微妙な感情のやりとりが きめ細かく描かれる …ひどく哀しげな充江の心象風景は、過去の 傷の真実にもつながり、心痛いが… 古風だが 女性心理を 上手に書き込んでいる、 そんな印象だった。2017/11/09

ヴェネツィア

109
1984年下半期芥川賞受賞作。選考委員たちからは概ね好評で、他の候補からは抜きん出ているとの評価を受けている。およそ、芥川賞に明確な選考基準はないように思われるが、小説作法において斬新さを持ったもの、あるいは時代の息吹を濃厚に反映するもの、そしてその反対に作家の心の内面を見つめる(すなわち、日本的私小説の系譜に連なる)ものが選ばれるようだ。「青桐」は典型的な後者のタイプ。富山県高岡市の旧家を舞台に、その崩壊を、縁続きの養女、充江の視点から描く。登場人物たちの、細部に亘っての心理の綾に小説の眼目がある。2014/02/23

新地学@児童書病発動中

45
1985年の芥川賞受賞作。癌にかかっているのに、病院の治療を拒否して、死を迎えようとする叔母の看病をする姪の話。叔母の病状が悪化し、肉体が腐敗していく描写は迫真的で、読み手の鼻腔にその匂いが感じられるほど。作者はクリスチャンなので、肉は滅びるという信仰に基づいて、そんな悲惨なことを正面から描いたのだろう。それでも、叔母の死には威厳があり、それがきっかけになって、姪は小さいころから悩んできたコンプレックスを解消する。(続く)2012/12/24

たぬ

27
☆4 芥川賞受賞作を読もうシリーズ。ちょっと考えてしまった。癌になっても医者には診せない。ごく親しい一部の家族にしか知らせない。自宅で病状が進むに任せる。これって家族にはとてつもない負担だよなあ。容体が悪化してもどうすればいいのかわからず医者も呼べず、いくら本人の意思とは言え周囲には「無理やりにでも受診させていれば」と白い目で見られること必至。神経が参っちゃうよ。同じ治療はしないにしても自分は周囲に迷惑をかけるのは避けたいからホスピスに入りたいなと思う。2022/08/26

大粒まろん

18
匂いや肌触りの感じられる文体。丁寧で巧いと思う。が、あまり共感は出来なかった。自己憐憫が強すぎる主人公充江の、侘しさがまとわりつくねっとりとした思考が脳内に染み渡って読んでいて、ほとほと疲れた。人間らしく厭わしい感情がぬめぬめと描かれており、どれだけ周りに恵まれていても、捉え方一つでここまで、自分を憐れむことが出来るとは。主人公以外僻んだ素振りのある者がいない事が救いとも言える。病に侵され消えゆく母(主人公の叔母)の命を淡々と見つめる娘晴子(主人公の従姉妹)の心情は解る気がした。上手すぎてグッタリ笑。2023/07/02

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