出版社内容情報
オカマ、上流人士、天才科学者、そしてエイズ・ウイルスが織り成す哄笑の人類進化論。この小説を読まずして九〇年代は語れない!
内容説明
産婦人科医・笹川賢一にとってルチアーノとの出会いが破滅の始まりだった。この執拗なおカマの尾行者のために、笹川氏の世界はハチャメチャな逆転をとげる。優雅な「上流社会」からの脱落、家庭崩壊、そしてエイズ。その中で笹川氏が得た真理と救済とは?エイズを通じて人間の生の深淵をえぐる問題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
25
☆☆☆☆★ エイズを隠喩として自己解体に至る島田らしい傑作。何と言ってもルチアーノのキャラクター設定が面白い。相変わらず世の中をなめきった文体も良い。ルチアーノは、作曲家べリオのファーストネームでもあり、シンフォニアなどの作風もこの作品と響きあうところから、何らかの関連性があるのだろうか。2017/02/09
しゅんしゅん
10
エイズを題材にしているが、エイズによって免疫不全になっていく身体と絡めて、思想を脱構築・解体しようと試みている部分にエネルギーを感じる。島田雅彦特有のブラックジョークのようなユーモア感覚、悪魔的な楽園を描くのに相応しい文体によって、エイズに感染したことにより自己のアイデンティティが解体されることにより、逆説的に魂が救済の方向へ向かっていくのが滑稽にも見えるし、それが真理だとも思わせる謎の説得力がある。性的に倒錯した人間から理不尽すぎるストーカーに遭い、恨んでいた人間をエイズもろとも受容する過程も凄い。2021/07/16
味読太郎
8
ルチアーノによる尾行は恐ろしい。経歴、収入その他どれをとっても人格者と評されている男につきまとい、男の生活を社会的に壊しておいて、習慣化された尾行の影を無くした男に寂しささえ感じさせるのだから。2014/09/21
sunafukinT
7
★★★ AIDSを人格が変わる 何か として扱っていて、読んでいて少し困る。。▼AIDSもそうですが、ストーカーについても変化球な解釈が好きな作者さんですね。。ストーカー、ルチアーノは単なるストーカーじゃなくて、生き方のアーティストみたいな?▼”常識””当たり前”をぐねぐねに曲げてくる感じ。。嫌いな人は嫌いだろうな。。私はあり。ただ、忙しくなかったり、ストレスがあまりないときに読みたい。2020/01/26
かえで
7
テーマはズバリ、AIDS。AIDSにかかった男が、AIDSを通じて愛や世界を見た結果、彼の世界観は変わってしまった。最初の章はとても不快であったが、未確認尾行物体=ルチアーノが退場してからにわかに話が盛り上がってくる。AIDS通してみた愛や考えを描こうとしたのだと思う。成功したかというと微妙であるが、扱いづらいテーマを島田雅彦さんが彼なりの文章と筋で描こうとしたことに僕は好感を持ちました。2012/05/01
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