内容説明
無類の刀好きだった秀吉は膨大な量の名刀を収集していたが、中に「にっかり」という不思議な名と由来をもつ一腰があった―。古来、刀は武器としてのみならず邪を祓い、身を守護すると信じられた。ゆえに、武将たちは己の佩刀に強いこだわりを抱いた。知将、猛将と謳われた武人たちと名刀との不思議な縁を描く傑作短篇集。
著者等紹介
東郷隆[トウゴウリュウ]
昭和26(1951)年横浜市生まれ。国学院大学経済学部卒業。同大学博物館学研究助手、編集者を経て執筆活動に入る。『大砲松』により平成6年度吉川英治文学新人賞を受賞。該博な知識を操る本格歴史小説の他、伝奇的作品にも定評がある
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感想・レビュー
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yoshida
124
武人と名刀の短編が8編。個人的に名刀や武具が好きなのですが、「にっかり青江」と「景秀」以外は知らず、奥の深さを感じました。どの短編も味わい深く良い作品に出逢えたと思っています。佩刀と共に生きた武人の生き様に哀愁を感じます。「このてがしわ」での細川幽斎と細川家の世継ぎ争い。「伊達脛巾」での、伊達政宗と豊臣秀吉の駆け引き。政宗が弟を斬った「景秀」を佩刀にした哀愁。そして「景秀」の切れ味。「まつがおか」での加藤嘉明と鯛助六の変わりゆく関係と栄華の果て。名刀にまつわる伝承は多いと思うが、小説としても楽しめました。2016/10/01
yamakujira
7
名刀にまつわる8編の短編集。刀についての蘊蓄に終始するのではなく、物語として楽しめるのがよかった。戦国時代のことだから、名刀といっても工芸品ではなく、実用価値が求められるのは当たり前だけれど、それぞれの刀がどれだけの血を吸ったのだろう。贋作でも名工が作れば名刀になり得るという「かたくり」は、真贋論争を皮肉るようで興味深い。刀に意思を感じる「まつがおか」みたいな、名刀よりも妖刀っぽい話が好きだな。 (★★★☆☆)2016/04/09
nizi
5
東郷隆といえば定吉七番でありローカライズしたパロディの見本みたいな作品だったが、すっかり時代小説の人間になってしまった。かつてのファンとしては寂しい限り。2024/12/04
夜行ぬえ
3
どうやら再読 百物語みたいな本でした。オチが後書きの「本が出ると同時ににっかりが発見された」 すげえやにっかり…これぞ人を食った話! というか表題作(にっかり)は落語っぽいですね、三段オチだ2015/05/19
えびえび
3
曰くありげな刀を題材にした作品です。 刀の銘や登場人物があまりメジャーじゃないせいか背景がすぐに理解できず読みにくく感じました。銘などに詳しい人なら楽しめると思います。2011/10/19