出版社内容情報
天皇と肝胆相照らす老提督が、敵味方の重臣たちを欺きつつ、終戦を演出する綱渡りの日々を追ったドキュメント史伝。大宅賞受賞作
内容説明
天皇と肝胆相照らす老提督が、あくまで本土決戦を唱える軍首脳、ひそかに戦争終結をのぞむ重臣たちの双方を欺く“腹芸”によってついに「聖断による終戦」という大ドラマの演出に成功した。日本の命運を決した、綱渡りの百三十日間を克明に追うドキュメント史伝。第14回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
目次
1 登場(4月7日)
2 哀悼の辞(4月13日)
3 天罰発言事件(6月9日・11日)
4 腹芸(6月8日・14日)
5 方針転換(6月22日)
6 黙殺?(7月28日)
7 聖断(8月9日)
8 聖断再び(8月14日)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フンフン
8
太平洋戦争開戦記念日に読了。80年に及ぶ鈴木貫太郎の生涯のうち総理大臣であった4ヶ月間についての評伝である。本職の歴史研究者ではなく、文学研究者なのだが、それだけに字句についてのこだわりがすごい。鈴木首相がルーズヴェルト大統領の死に際して発した弔意について、アメリカに亡命中のトーマス・マンがドイツ国民向けに、ナチスによる敵国大統領の死を侮辱するような宣伝と比較して、日本には「騎士道精神と人間の品位に関する感覚が…まだ存在する」と放送していたことを発見したのは比較文学者の著者にしてできたことだったろう。2022/12/08
ソノダケン
0
著者は鈴木貫太郎の遠縁にあたるらしく、あつい尊敬の念が正仮名で綴られた文章にこもる。鈴木の深謀遠慮を強調するあまり、「『聖断』は立憲制度下では何ほどの意味もない」などと書いて、裕仁がただのお飾りとなっている。著者は右翼なのに。終戦に関しては、それが真相なんだろうけど。2014/11/29
しなじい
0
昭和20年の末期的状況下の日本で行われた、ポツダム宣言をめぐる国家の意思決定プロセスには大日本帝国の抱えていた廃疾の一端が垣間見られる。今日で本書の終戦から69年経つが、通り一遍の戦争に対する非難や嘆き、断定的な言説ではなく、より柔軟で丁寧な振り返りを心がけたい。2014/08/15
-
- 和書
- 新関西に蠢く懲りない面々