内容説明
躰の中で、なにかが止まった…。四年前のある日、平凡な会社員・立原に生じたある感覚。いまや彼にとって、日常や人間性など無意味なものでしかなく、鍛えあげた精神と肉体は次第に凶器と化していく。取引先のビルの立ち退きを巡る抗争事件に巻き込まれた立原は―。男の心の闇を抉る異色のハードボイルド長篇小説。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
昭和22(1947)年、佐賀県唐津市生れ。47年中央大学法学部卒。58年「眠りなき夜」で第1回日本冒険小説協会大賞、第4回吉川英治文学新人賞、平成3年「破軍の星」で第4回柴田錬三郎賞、16年「楊家将」で第38回吉川英治文学賞を受賞
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感想・レビュー
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chiru
79
サラリーマンの擬態した生き様を描く下克上ハードボイルド。 敵は巨大組織である会社と暴力団。ヤクザの裏をかきまくったり、会社の幹部連中を見返す中盤までは痛快。終盤の狂気とバイオレンスのカオス展開には愕然。 明確な憎悪も理由もなく、ボクシングで鍛えた身体をフルに駆使したオーバーキルが炸裂。 本物の自分は「平凡なサラリーマン」と「獰猛な獣」のどちらだったのかな…後者だったのかも。 ★32018/06/25
TAKA
57
10代の頃にハードボイルドとエロさが面白くて北方謙三を読み漁りました。時代物になってからは全く興味なくなってました。古本屋で見つけ懐かしく手にしたが、やっぱり面白い。これですよハードボイルドは。不死身の主人公と適当なエロス。普通のサラリーマンなのに強い。ヤクザ相手に強い。このキャラはやっぱり魅力的でいい。ぞくぞくしながら読む高揚感。ハードボイルドは昭和の置き土産になったのかなあ。あらすじはこんなもんですかね。2020/08/17
GAKU
53
巻末の解説で冒頭、池上冬樹氏が「最初に結論を言おう。本書『擬態』は、北方謙三の最高傑作『檻』(1983)に匹敵する作品であり、現代ハードボイルドの里程標ともいうべき作品だ。」と述べています。また、「大藪春彦氏の傑作『蘇る金狼』へのオマージュといえる部分もある。」とも。氏の解説に大いに賛同。歴史小説中心になった以降に、このようなハードボイルド小説の傑作が埋もれていたことに気付かなかったとは、自称北方謙三ファンとしては反省と共に、この小説に出会うきっかけを与えてくれた読友さんに感謝です。北方ファン必読!2016/04/07
ねこまんま
32
ずっと気になっていた作家さんなのですが、遂に初読み。 歴史小説を書く人だと思ってたんですが、これはハードボイルドです。 めっちゃかっこいい。 久しぶりに正統派ハードボイルドを読んだ気がする。 体鍛えよう!って気になりますよ(笑) 大満足。 他も読んでみたい。 お勧めありましたら教えてください。2016/04/21
GAKU
24
久しぶりの再読。コテコテのハードボイルドです。2025/04/30