出版社内容情報
黒沢映画の名品「酔いどれ天使」の脚本を手がけたこの作者と、不世出の天才監督との友情と離反、日本映画の疾風怒涛の時代を熱気あふれる筆致で描く異色青春小説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こうすけ
10
素晴らしき日曜日、酔いどれ天使、ともに黒澤作品のなかで大好きな作品。その脚本家が、小学校からの幼馴染、黒澤明との映画制作の日々を綴った自伝的小説。そこに東宝争議や戦後の混乱・窮乏といった社会状況を織り交ぜる。個人的には黒澤明や橋本忍の回想録や、野上照代さんの天気待ちよりも面白く読みごたえがあった。黒澤明と対等にぶつかり合える作者だからこその、勝ち組・黒澤への批判的な視点が良い。2020/06/19
tsukamg
0
黒澤明の幼なじみで「酔いどれ天使」などの映画では共同のシナリオライターだった植草圭之助による黒澤明伝。羨望と劣等感を持ちつつ、友の颯爽とした様子を描写している。小説家であるためか、描写力は黒澤明の『蝦蟇の油』に勝る。が、黒澤明は常に勝ち組であるような見方は偏りがあると思った。プロデューサーの本木荘二郎と三人で打ち合わせをする場面が面白い。2016/09/12
緑色と風
0
黒澤明さんの人柄が垣間見れる作品。「酔いどれ天使」「素晴らしき日曜日」の脚本を手がけた著者の回顧録形式で綴られている。本書を読んでから、両作品を見ると、絶えず観客をワクワクさせるために試行錯誤(実験)を続けていたことが伝わってくる。本書と両作品のシナリオと映画を交互に見ながら、読み進むと、植草さんと黒澤監督がいる制作現場に自分も立っている気がしてきた。シーンをつなぐリズム。クイック、クイック、スロー。プロット作りのエッセンスをもらった気がしている。