出版社内容情報
なき父の借財をかかえた大学生の支えは、可憐な恋人と一匹の小動物だった。勁く真摯に生きる若者を鮮烈に描いた、青春文学の傑作
内容説明
生きた!愛した!闘った!めくるめく、あの青春の日々よ。―なき父の借財をかかえた一大学生の、憂鬱と人生の真摯な闘い。それをささえる可憐な恋人、そして1匹の小動物。ひたむきに生きようとする者たちの、苦悩とはげしい情熱を、1年の移ろいのなかにえがく青春文学の輝かしい収穫。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
192
自己を確立させようとする男子大学生。明確ではないが、おぼろげな生死が主題か。残した借金を背負わされる形で死んだ実父、持病の心臓病から死を目前に生きる続ける友人、些細に感じる家族間の亀裂から自殺を決意する夫婦、酸いも甘いも知り尽くす妖艶な老女の死、それらを柱へ釘付けされたトカゲの生に投影させていく。主人公は想う「死があるからこその生」だと。死の理由がなくなる利己こそが生を堕落させ否定すると。一方、周囲から受ける自分でどう仕様にもできない一瞬一瞬の心の動きは、否応なしに生を喚起させる。それこそが生だと表すか。2020/05/20
優希
72
哲学的な作品ですね。人生を生きるということの深みを考えさせられます。憂鬱や苦悩、情熱などの感情が満ちあふれ、前向きに歩む主人公の姿を見ていると幸せを祈らずには入られません。冬の寒さから春の暖かさへ足を踏み出すような青春小説。2018/04/04
菜穂子
65
柱に打ち付けられた蜥蜴。その忘れられない光景はこの作品だったのかと再読して思い出した。父の死後、その借金を背負わされた大学生の哲之の状況と、逃れられない運命の自分と柱から動くことが出来ない蜥蜴を投影して、自分の置かれた場所で、もがきながらも逃げずに真正面から様々な問題に対峙する青年の姿は清々しくも鬼気迫るものがあった。2021/10/24
背番号10@せばてん。
30
1988年5月29日読了。あらすじはもちろん、忘却の彼方。(2020年12月17日入力)1988/05/29
ころころ
14
★★★★ 夢と思っていたものが夢ではなくなること、生きることの闘争。哲之と陽子の恋愛。釘に打ち付けられた蜥蜴のキンちゃん。宮本さんの作品を10冊くらい読み・・・物語の流れ、登場人物の心情や描写の美しさだけでなく「ここ!ここが作者の言いたいところだ」と直接的でわかりやすいのが良さである。生死観についても考えさせられる。2010/06/20
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- 和書
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