内容説明
幕末から明治にかけて一刀正伝無刀流を開き、明治維新では勝海舟、西郷隆盛らと親交をかさね、大政奉還後の官軍と幕軍の衝突を防ぐべく身を挺した山岡鉄舟は、剣の人であると同時に、天皇側近の人でもあった。剣豪小説で定評のある著者が、剣の奥義をきわめた鉄舟の「無我」で虚心、その悠然たる生涯を描く。
著者等紹介
津本陽[ツモトヨウ]
昭和4(1929)年、和歌山市に生れる。東北大学法学部卒業。昭和53年「深重の海」により第79回直木賞受賞。史料を十全に分析する闊達な史観から旺盛な創作活動を続けている。平成7年「夢のまた夢」で第29回吉川英治文学賞を受賞。平成15年旭日小綬章を受章
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感想・レビュー
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糜竺(びじく)
18
幕末の江戸城の無血開城に導いた立役者の一人の山岡鉄舟の生涯を描いた小説です。この人がいなければ、江戸は焼け野原、そしてもしかしたら今の東京の姿も無かったかもしれません。後には、明治天皇の側近として仕え、その頃のエピソードも興味深かったです。剣の達人でもあり、名誉も命も惜しまない、本当に一本の芯が通った人だと思いました。そんなに長くないので、すぐに読めました。2013/04/29
なつきネコ
15
山岡鉄舟の生き方はやさぐれたり。落ち込んだときに心に刺さる。なんというか、まだ、そこまで追い込んでいないという気になる。剣の極地を求め、不動の心を練る。一剣士として憧れる物がある。その一技が幕末という時代に感応して、仕事を渡してやり遂げる。極めるという一途さは凄まじい。高橋泥舟、徳川慶喜、西郷隆盛や明治天皇などの英傑に信用されたのも、この一途なところにあるんだろうな。何事も本気の凄まじさを感じる。あれ程の粗稽古をやればそれは強くなると感じさせる。山岡鉄舟という武人の一生と研鑽を思えばマダマダだと感じる。2021/01/26
woo
8
幕末の剣豪、晩年は明治天皇の側近く仕えることになる山岡鉄舟(鉄太郎)の物語。概ね史実に即したものと思われるが、明治以前の武人の生き様というのが良く描かれていて、昨今の(己を含めた、特に日本人の)軽薄軟弱な社会のあり様に一石どころか岩塊を投じられたの感あり。まあ、世相の違いを鑑みればやむを得ないことなれど、変な哲学本を読むよりは悟りの境地に近づけるかも(笑)2019/04/21
makimaki
8
『命もいらず名もいらず』を先に読んでいたので、より分かりやすかった。また、どちらかにしかないエピソードもあるので、両方読んでよかった。2013/07/09
yamatoshiuruhashi
8
読友さんのレビュー読んで購入。久々の津本陽で、久々に一気に読み上げるほど引き込まれた本となった。この本で、リズムを取り戻したい。 山岡鉄舟については幕末維新のころの他の本で読んだりしてはいたが、初めて鉄舟を主人公とした本を読んだ。手塚治虫「陽だまりの樹」の鉄舟を思い出して苦笑。2013/06/05