出版社内容情報
五十に近い未亡人の元教師が、かつて特別の思いを抱いていた教え子に再会した時、何が起ったか。自らの老醜に『山姥』を見た主人公を照射した第79回芥川賞受賞作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
196
第79回(1978年)芥川賞。 未亡人となった伸予の かつての教え子 善吉への 視線が印象的な作品である。 30年経って、再会した二人の微妙な 感情が 伸予の視点で語られる。 伸予の 過去の記憶が交錯して、浮かび上がる 真実が まるで ミステリーを読むようである… それにしても 伸予の執着は凄まじい。 例えようもない 老女の色気を感じる、そんな 物語だった。2017/10/17
kaizen@名古屋de朝活読書会
105
【芥川賞】ブリキ屋の善吉と先生だった伸予。夫に先立たれ、「海の絵を描いてみたいと思って、通信教育に手を出した」り、謡曲、彫金。久しぶりに再会し、当時の話をする。著者は6歳で母を亡くし、13歳で父を炭鉱の落盤で無くす。北海道庁給仕をしながら夜間中学。代用教員、師範学校中退後、住友石炭鉱業勤務で、炭鉱文学小説部門で入賞。漫画、小説など。2014/02/01
ヴェネツィア
100
1978年上半期芥川賞受賞作。5年前に「ぽぷらと軍神」(本書に併録)で文学界新人賞を取っており、新人という感じはない。むしろ、小説を書き馴れた作家という印象だ。ただ、芥川賞の選考委員たちは誰も問題にはしていないのだが、私には15歳の中学生と、女学校を出たばかりの20歳の新任女教師の恋という設定がそもそも肯けない。もっとも、物語の主たる時間はその30年後なのだが。50歳の女性が主人公というのも珍しい設定。彼女の煩悶が小説の主軸になっているのだが、ここでも読者の共感を得るのは難しそうだ。読者像も想定しにくい。2014/03/04
メガネねこ
3
★★★☆☆第79回芥川賞受賞作品。筆者はこつこつと小説を書き続けているタイプの小説家。特別な経歴はないみたいである。でも、文章自体は素直な文体で読みやすく好感が持てた。中年女性の恋愛心理を描いているのだが、どことなく繊細で最初は作者は女性ではないかと思った。ストーリーはさほど面白味もなく特筆すべき点はない。2012/02/22
Yuki
2
伸予の他律性、そして、それが空を切る虚しさ。収録作品中、「伸予」が群を抜いて良作です。2016/09/25
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- 和書
- 大関にかなう 文春文庫