内容説明
日中戦争のさなか、重慶にたてこもって日本と戦いつづける蒋介石とは別に、南京国民政府を樹立して日本との和平交渉に踏み切った汪兆銘。それゆえに「売国奴(漢奸)」のレッテルを貼られ、中国革命の歴史から抹殺された文人政治家の、真のねらいとは何だったのか?遺児たちの証言をもとに歴史の真実に迫った画期的労作。
目次
第1章 半世紀、埋もれていた資料
第2章 文人政治家のロマン
第3章 権謀術数、反共か抗日か
第4章 日中、裸で抱き合うべし
第5章 和平工作に仕掛けられた罠
第6章 蒋介石との訣別
第7章 日本政府の汪兆銘救出作戦
第8章 最終段階における部下の裏切り
第9章 悲劇の南京国民政府誕生
著者等紹介
上坂冬子[カミサカフユコ]
1930年、東京に生まれる。作家、評論家。昭和史・戦後史にまつわるノンフィクションが多い。1993年「硫黄島いまだ玉砕せず」で第41回菊池寛賞、第9回正論大賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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金吾
25
汪兆銘に関する本は初めて読みました。親族でないとわからない話もあり、興味深い話でした。蒋介石と対比すると人物としては良くても政治家としての押しが足らないのかなと感じます。2023/09/26
うたまる
2
「君(蒋介石)は安易な道を行け、我(汪兆銘)は苦難の道を行く」……中国人から漢奸(売国奴)と呼ばれる南京政府主席、汪兆銘を描くノンフィクション。彼は何故今も消えない汚名を着せられたのか。巨悪の日本、極悪の欧米、俗悪の国民党(蒋介石)、醜悪の共産党(毛沢東)に囲まれ、彼が採ったのは日本との講和と協調。上巻は第二次大戦の直前までだが、既に日本軍部に翻弄されっぱなしで痛々しい。我々が幕末以降に欧米から受けた暴戻・無道ぶりと何ら遜色ない日本の横暴・非道ぶり。目にも耳にも痛い歴史だが、背筋を伸ばして読む。2015/07/30
shinoper
2
汪兆銘(汪精衛)を知れば知るほど、日本と中国の歴史にとって彼がいかに重要な人物であるか、そしてこの人を知らない限り日本と中国の近代史は理解できないのではないかと思えます。にもかかわらず、中国側ではもちろん、日本側においても彼の知名度の低さは、政治的な情報操作を感じずにはいられません。中国においての情報操作を問題視する声が高くなる中、日本においても未だに戦時中の事柄については、情報操作が存在している(?)事をわれわれ日本人もしっかり認識すべきでではないでしょうか。2008/10/26
akon
0
書名になっている「我は苦難の道を行く」は汪兆銘が蒋介石に送った書簡の「君為其易、我任其難」に由来するが、連合国側の蒋介石の国民政府と日本側の汪兆銘の南京国民政府とにお互い合意の上で袂分ち、連合国と日本のいずれかが勝つても中国が生き残れる作戦だったという説は興味深い。 日本も汪兆銘の南京国民政府を前提として、近衛内閣の「国民政府を対手とせず」という声明を出したのならば理解しやすい。2022/04/22
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