出版社内容情報
ダ・ヴィンチ、ミケランジェロら天才たちの名とともに輝くイタリアの太陽・フィレンツェ。芸術と歴史を軸にこの都市の姿を捉える
内容説明
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラッファエッロら幾多の天才たちの名とともにルネサンスの栄光に輝く都市。この“ローマの名高く美しい娘”フィレンツェの偉大さは、領土や軍事力にあるのではなく、文化の繁栄、共和国的体制にこそあった。歴史と芸術作品を通して、花の都を支えてきた市民とその心を描き出した都市ガイド。
目次
序章 フィレンツェの神話―古代ローマの娘・新しきエルサレム
1 都市の形成
2 最古の聖域
3 信仰にかたちを与えた聖堂
4 メディチ家の興隆と国際的都市への変貌
5 ロレンツォ・イル・マニーフィコと黄金時代
6 共和国の終焉
7 パラッツォ・ヴェッキョ―トスカーナ公国の宮廷文化
8 ピッティの方へ
9 ウッフィーツィを歩きながら
終章 都市の再生
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Christena
9
ウフィツィ美術館の復習と、ウフィツィ美術館展の予習として。フィレンツェの街は全体が美術館、それぞれの作品に深い歴史がある。この本は、それのほんの入口ということだが、かなり濃い内容でした。歴史を勉強し直さないと、理解しにくい部分も。展覧会も見応えがあったけど、フィレンツェはもともとの場所に作品が点在している貴重な場所ということで、またいつか行きたいです。この本も連れて。2014/12/07
はる
6
「一つの絵を見るにも、歴史を知らねばならない。歴史を知るには、一枚の絵を見なければならない。都市は、歴史を刻み、歴史は都市を残す。」美術史家若桑みどり氏の渾身の一作。フィレンツェ・メディチの勃興、成長、衰退の三百年の時間の中で花開いたルネサンス。 古代ギリシア・ローマ芸術様式が中世様式を脱し現実把握の再生へと向う。寓意に満ちたキリスト教義の宮廷絵画とプラトン主義に浸るフィレンツェのメディチ家。宗教改革と宇宙、人体、運動の現実把握がもたらした芸術の変容は職人から自らの心性を表現する芸術家へ。→2023/04/25
うえ
4
1530年8月12日、フィレンツェ共和国最後の日。皇帝と教皇双方を敵に回し、三万人の犠牲者を出して降伏。防衛指揮官ミケランジェロも祖国防衛に当たっていたが、逃亡。結局連れ戻され防衛に従事していた。彼が処刑されていれば『最後の審判』も『メディチ家の墓』も我々は目にしていなかった。陥落後、かつての義兄弟、クレメンス教皇は『墓』を制作を続けることを条件に、助命。彫刻にとりかかるがそれは“愛よりもむしろ恐怖に駆られて“だった。今日のミケランジェロ広場とは彼が壁をめぐらし砲を置いたサン・ミニアートの丘であるという。2024/11/10
気が向いたらかじかじ
4
美術の初心者はまず古代彫刻の模造デッサンから始める。これはフィレンツエのアカデミーで始められた教育法だった。高校のとき美術選択で木炭でデッサンをした。(消すときは“パン”)美術室の数個の像の中に“メディチ”とあった記憶がある。 フィレンツエの歴史と芸術が最後まで怒涛のようにあふれ、ためいきを感じながら 芸術は歴史であり人間であり現在である・・・などととぐるぐる眩暈を覚えながらも ますます知りたい!と思ってしまった。 また再読・参照本が増えた。2011/05/30
さんとのれ
0
ルネサンス芸術の演出という角度から見たフィレンツェ史。ウフィツィ美術館の建物のような回廊のような広場のような独特の存在感が、絶対主義を目指すメディチ家の都市計画に組み込まれていた故だったり、ミケランジェロの晩年の作品に見える閉塞感が、普遍的な人間の苦しみに限らず政治に関わりながらそれを裏切らざるを得なかった個人的な苦悩の現れだったりと、芸術というものはそれを取り囲む時代の流れや受け止める人との関わりの中でこそより意味を持つということがわかる。2015/08/31