出版社内容情報
故郷・土佐に男稼業の看板を掲げた鬼龍院政五郎と、彼をとりまく女たちの愛憎入り乱れた人生模様を独自の艶冶の筆にのせた長篇。
内容説明
大正四年、鬼龍院政五郎は故郷・土佐高知の町に男稼業の看板を掲げ、相撲や飛行機の興行をうったり労働争議に介入したりの華やかな活躍を見せる。鬼政をとりまく「男」を売る社会のしがらみ、そして娘花子・養女松恵を中心とした女たちの愛憎入り乱れた人生模様を、女流作家独自の艶冶の筆にのせた傑作長篇。
著者等紹介
宮尾登美子[ミヤオトミコ]
大正15(1926)年、高知市に生れる。昭和37年「連」で婦人公論女流新人賞を受賞。さらに48年「櫂」で太宰治賞を、52年「寒椿」で女流文学賞を、54年「一絃の琴」で直木賞を、58年「序の舞」で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。平成元年、紫綬褒章受章。平成20年、菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
90
夏目雅子さん主演の映画は未見。義理を重んじた為に兄に搾取され続け、父にいびられた漁村の子は高知の極道、鬼政となった。これは鬼政の栄華と没落の記。「任侠」と掲げていてもそれは男だから通じるもので、女に手を挙げ、愛人と一緒に住ませ、召使扱いの義理の娘でも他の男に奪われるなら犯そうとする屑ぶり。久しぶりに「人面獣心」という言葉を見かけたな。鬼政亡き後に残ったのは虎の威を借る狐と役に立たない女達だった点が後味が悪い。そして化粧はするけど、不精のために着替えも洗濯も風呂もできない花子の不潔さには嫌悪感で顔が歪む。2018/12/14
ann
65
やっと手に取ることが出来た宮尾登美子氏の代表作のひとつ。宮尾作品はかなり読んだのに本作は敢えて読まずにきた。一代記三代記を好む自分には、ある任侠一族の栄枯盛衰を、人生観になぞりながらも氏の哲学も垣間見ることが出来て、満足度の高い朝の読書時間だった。2018/08/20
TAKA
58
「なめたらいかんぜよ」夏目雅子のこのセリフ が印象に残っている。けど原作には無いんですよね。養女松恵目線で語られる鬼龍院政五郎の隆盛と衰退、その娘である花子の生涯。因果の怖さ、恐ろしさ。極道者の父の血を孫が受け継ぎ、あの母にして娘も落ちるとこまで落ち憐れな人生で幕を閉じる。一番不憫なのは松恵ではなかろうか。鬼政一家の呪怨を花子の死で終わらせられただろうか。侠客の世界は勢いがある時は華々しいが没落する時は悲惨だな。2023/08/30
hit4papa
52
大正から昭和にかけて、高知でなお馳せた侠客 鬼龍院政五郎(鬼政)一家の栄枯盛衰を描いた物語。語り手は、鬼政に拉致同然に養女とされた松恵で、彼女の深いため息が聞こえてくるような不幸な人生と並行して、一家に起きた様々な出来事がつづられます。タイトルにある花子は脇役の一人なのが面白いですね。松恵から見た一家の衰退を象徴しているだけのよう。鬼政からの逃避行を試みるも雁字搦めに囚われる松恵。それは鬼政の死後も続きます。花子の晩年は悲惨ですが、幸福の時が僅かしかない松恵の人生を思うと切なさが込み上げます。名作です!2023/10/04
油すまし
51
ヴェネツィアさんのレビューに心掴まれ読みました。夏目雅子さんが映画で演じたのは鬼龍院花子だと思っていたので違うことに驚いたし、啖呵を切るあの科白「なめたらいかんぜよ」は原作にはないというのも読みたい気持ちをかき立てました。因果というのはこれほどまでに、と想いを馳せる内容で、この時代の登場人物それぞれの人生が重く心にのしかかってくるようであり、映画で夏目雅子が演じた養女、松恵の強さ、情の深さ、参りました。映画を観てから読んだので夏目雅子さんの姿が見えるようでした。原作、映画ともに良かったです。2022/07/24