出版社内容情報
NHK大河「龍馬伝」は、後に三菱財閥を築いた岩崎弥太郎の視点で龍馬を描いた作品だが、その岩崎の評伝の決定版がこの小説だ!
内容説明
後に龍馬と「船中八策」を練り上げる後藤象二郎がいる少林塾門下となった弥太郎は、まず土佐商会主任、長崎留守居役に抜擢される。御一新以降は海運業を始め、大坂の土佐藩蔵屋敷で個人商店を興し巨万の富を手にする。西郷隆盛、井上馨、木戸孝允、桐野利秋ら精鋭きらめく群像劇において、弥太郎は何を演じたのか。
著者等紹介
南條範夫[ナンジョウノリオ]
明治41(1908)年、東京生れ。東京帝国大学法学部を卒業後、さらに経済学部を卒業し助手となる。以後、満鉄勤務などを経て戦後は教壇に立ち昭和54年まで國學院大學経済学部教授。傍ら作家として活躍、31年、「燈台鬼」で第35回直木賞を受賞した。平成16年10月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
35
剛腕・独裁・拝官商人・岩崎弥太郎を通じて幕末・明治を描く力作。下巻は、廃藩置県時の藩債務処理、山城屋事件、にせ札事件、開拓使問題、凄惨な海運競争、劣悪な高島炭鉱等の維新の疑獄や事件の構図・事情が詳しく描かれる。ここまで詳細が描かれるのは記憶になく大いに収穫あり。さらに驚くことは、本作が昭和37年に新聞小説連載で、同時期あの「龍馬がゆく」も新聞連載されていたとの解説だ。「龍馬」は、かの作によって一躍歴史の英雄に祭り上げられたが、同じ土佐出身の岩崎をクールに突き放して描き切る著者の姿勢も共感大だ。2020/12/20
Akihiro Nishio
25
維新なり経済の時代に。三井、渋沢、住友、安田など財閥が台頭してくる。その中でも弥太郎率いる三菱は圧倒的である。三井との仁義なき経済戦争が熱い。筆者は経済学部の教授であるらしく経済描写が卓越している。どう判断し、どのように利益を出したかがきっちり描かれている。さて、全く役に立たない女好きの色男だが、最後に単なるラッキーで三菱に貢献。このためだけに、彼の女遍歴を延々描いてきたのも謎であるが、弥太郎の剛強さとバランスを取って読みやすくするためか。板垣退助が刺されたのはうちの目の前。あの事件で死んでないことを知る2017/04/25
まつうら
22
(上巻の続き)三菱商会を立ち上げてからの弥太郎は、大隈重信に取り入って政商ぶりを発揮していく。とはいっても、当時の経済人は少なからずみんな政商だ。その中でも弥太郎は群を抜いていて「憎まれっ子世にはばかる」がぴったりな感じに描かれている。そして、そこに釘を刺そうとするのが渋沢栄一で、二人が初めて顔を合わせるシーンは見ものだ! 論語と算盤を主張する渋沢は、傲然とした政商ぶりの弥太郎とは相容れない。その後、渋沢は三井と組んで三菱に対抗していくが、どうしてもかなわない。憎まれっ子の方が強いのか? ちょっと残念。2021/10/24
誰かのプリン
22
さすが歴史経済小説だけあって、 明治時代の国家経済状況が良く書かれている。それにしても三菱のやり方は汚いなぁ。ゞ(`')、2019/07/28
kou
14
もし、龍馬がもっと長生きしていたら、三菱のような商社を興していたんだろうな。 最近知ったことですが、キリンビール(三菱系)の麒麟は頭が「龍」で、足は「馬」だそうです。 弥太郎の龍馬に対する想いがここに顕れているのだとか・・・・2016/05/08