内容説明
ティールームでみた花の絵の中に描かれた女は私?画中の出来事に胸騒ぎをおぼえる女客「黄水仙」。夏至を過ぎた季節に死びとの名を呼んではいけない「半夏生」。夫の命日を前に、虫の音に思い当たる妻「鉦叩き」。やくざと正義派の婦人の衝突から導かれる意外な結未「年の瀬」。十二の季語から生まれた短篇集。
著者等紹介
阿刀田高[アトウダタカシ]
昭和10(1935)年東京に生れる。早稲田大学仏文科卒業。国立国会図書館勤務を経て文筆活動に入り、54年、短篇集「ナポレオン狂」で第81回直木賞を受賞。平成7年、「新トロイア物語」で第29回吉川英治文学賞を受賞
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感想・レビュー
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KAZOO
41
この短編集は、歳時記の季語が題名となっている短篇が12入っていて、年の初めから年末までさまざまな情景を楽しませてくれました。中にモーパッサンの短篇と同じような話がありました。また解説を宮部みゆきさんが書かれています。最近余り阿刀田さんというのは人気がないのでしょうかね。星さんは結構人気があるようですが。(感想があまりないので)2015/03/30
MIKETOM
8
12編のタイトル全てが歳時記などの季語になっている。そして「鈍色」ってことでブラックだったり幻想譚だったり、そんな内容。第一話『冬日和』ラストで主人公が受けた衝撃はなかなかのもの。まさかそういうオチとは思わなかった。言われてみれば、ね。第二話『豆撒き』ここに書かれている悲劇は日常にありそうなだけに心に刺さってくる。外から聞こえてくる豆撒きの掛け声がああいう風に聞こえたとしてもむべなるかな。忘れるのが一番いいんだけど忘れられるもんじゃない。俺も女房と一人息子なだけになおさら。まあまあ、そこそこな短編集。2020/01/08
ポメ子
5
季句から発想を、得て描かれた短編集。どれも良いスパイスが効いていて、どんどん読み進めるし、読後、物思いにふける。 特によくできているなあと思ったのは、「鉦叩き」と「父の日」だった。2019/09/22
Annie
1
中学時代、引っ越す前でまだ狭かった私の実家の部屋は、父の書庫と化していた。笑 多分に父の影響で小説が好きになった私の、当時の愛読書はアガサクリスティと阿刀田高さんでした。 この方の作品は、読み終わりがどうにも気持ちよくない!笑 9割で終わる所がみそなんだろーなー。あとは考えて下さい、みたいな。 だからこそまた読んじゃうんだろうな。 今年最後は阿刀田高さん、なんか懐かしくて、いい感じ☆2012/12/30
火星人碧
0
俳句の季語を題材に書かれた12の短篇小説。表題に示されるように明るく愉しい話はあまりない。けれど軽妙な会話でストーリーを進める手法は、暗さをほどよく中和してくれるようだ。初めて阿刀田作品を読んだとき(『ナポレオン狂』である)のような感動こそないが、相変わらずの安定感で読ませてくれる。2016/08/03