出版社内容情報
「一国の首都の陥落前後という決定的な時期が日を追って克明に記されている。登場人物たちの生彩がそれにまたとない肉や果汁や香りをつけている」。開高健氏の評だ
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
314
現代史の大きな1ページ―1975年4月30日のサイゴン陥落(解放)の日の前後を綴ったルポルタージュ。筆者は、当時サンケイ新聞のサイゴン特派員を務めていた。渦中にいなければ書けない、しかし同時に歴史を俯瞰する目を持っていないと書けない貴重なルポだ。現場で働かせるのは眼だけではない。皮膚も気配も、体感のすべてを働かせていないと命にまで危険が及ぶ。近藤紘一は、開高健の衣鉢を継ぐ貴重なジャーナリストの一人。妙に図太く、適度にいい加減な(いい意味でだ)ところもまた、開高を思わせる。2016/07/30
ケイ
136
サイゴン陥落の日。そこにいたからこそ感じる息吹はある。しかし、自分はいつか帰れるからという作者の気持ちがどこかで透けて見えるような気がした。一部の記者たちの気概には、多分に身勝手なものがあるように思う。『シンパサイザー』を著したヴィエト・タン・ウェン氏がこれを読んだらなんていうかな。8年前と昨年に、旅行で訪れたベトナムの人々の優しさを思い出す。彼らの平均年齢は30歳に届かず、若々しさに溢れていた。ここにある戦争を知らない世代が今、国を動かしているのだなあ。2019/06/18
AICHAN
33
図書館本。サイゴン陥落の前後を記録したルポルタージュ。著者は当時、サンケイ新聞のサイゴン特派員。当時のサイゴンの人々の暮らしが肌で感じられるような、まさに現地報告(ルポルタージュ)だ。歴史的な出来事の貴重な現地報告であると同時に、不謹慎ながらとても面白いエッセイとしても読める。居候した家の女主人と“堅苦しくない関係”を結んだ著者が成り行きで夫婦になったり、彼女を安全な日本に旅出たせると、中国人の強烈無比なメイドさんに自由を束縛されてしまったりと、実に人間的な著述が続く。視る目と感性と文章がただ者ではない。2016/08/26
樋口佳之
24
支局や大使館でも停電はなかった。ベトナム電力公社の副社長が、革命政府側の潜伏幹部で、このため首都圏一帯への給電に支障が生じなかったことをあとで知った。/これは懐かしい逸話に遭遇なのだけど、真偽はどうなのでしょう?2018/05/23
kazuさん
19
ベトナム旅行中に、この本をホテルのロビーで見つけ、帰国してから読んだ。ベトナム戦争におけるサイゴン陥落のルポだが、熱帯に位置するサイゴン、今のホーチミン、の町の姿が庶民の生活を含め、原色で生き生きと描かれている。筆者のこの町に寄せる熱い思いがヒシヒシと伝わって来る。この本をきっかけに、一気にサイゴンが好きになった。2020/12/29
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