内容説明
「礼をおこたった晋は欺瞞の国になる。」苦悩の果て、覇権争いに乱れた祖国を離れ秦に亡命した士会は、君主に重用され平和な日々を送る。しかし、危難にある晋からの使者が再び士会のもとを訪れる―。徳を積み、知謀の限りを尽くして国を救った天才兵法家の一生を、多彩な人物が息づく古代中国に描きだした傑作歴史長編。
著者等紹介
宮城谷昌光[ミヤギタニマサミツ]
昭和20(1945)年、蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事、創作をはじめる。その後帰郷、ながい空白ののち「王家の風日」を完成。平成3年、「天空の舟」で新田次郎文学賞、「夏姫春秋」で直木賞、「重耳」で平成5年度芸術選奨文部大臣賞を受賞
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感想・レビュー
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糜竺(びじく)
42
下巻も重厚で面白かったです。秦に亡命した士会が、再び晋に戻って、また、様々なドラマが起こり、読んでいて吸い寄せられました。名言も多く学べました。引用「士会には友人と呼ぶ事の出来る人がいない。先軫に仕えて以来、上を向いて生きてきた。横を向いた事がない。友人を作る事が出来ないのは人格に幅がないからであろうか。ここで士会は徳の不足を感じた」「早く才能が開花すれば零落するのも早い」「私はおごっている者を憎まない。なぜならおごっているものは自ずと滅ぶ。が、怠けている者はどうか。私は怠けている者を最も憎む」2016/01/23
sakap1173
36
士会の人生は、徳に溢れていて、読後感がとても爽やかな作品でした。 すっかり、年齢とともに感受性が鈍くなったのか、自分の人生になにかを置き換えたりインスパイアされることが少なくなってきたけれど、本作は感じることがとてもありました。 すべてのことに対して、自分に対して、誠実でありたいと切に思います。 そう思わせてくれる作品と宮城谷昌光先生に感謝です。2021/02/27
サチオ
15
士会は常に私欲はなく報恩と謙譲を心掛けた人物であり、であるからこそ詐妄にまみれた時代を見事に生き抜いた。息子の士燮もその訓戒をしっかり受け止めた所は士会と供に目を細めた。他者があっての己である。晩年に差し掛かり決断力の欠如から大失策を犯した荀林父が、周りに生かされて初めて他者が見え始めたのを感じた士会が「死ぬまで人は成長するものだ」と語る場面が、特に印象的でした。人生の哲理を歴史は雄弁に語るものですね。2013/08/28
Tomoichi
14
亡命先の秦から祖国晋へと帰国した士会。そして彼の運命は少しづつ動き出す。宰相の地位まで上り詰めた一人の兵法家を描く長編。2017/05/03
サチオ
14
再々読。文公亡きあと短命の君主が続き、周りの見えぬ卿に揺れる晋。その中でも礼をはずさず次第に人望を集めていく士会。彼の言葉や行動には勇気と真心がこもっていた。ラストシーンの弗との対話の情景が胸に染みました。2016/04/08