内容説明
羌という遊牧の民の幼い集団が殺戮をのがれて生きのびた。年かさの少年は炎の中で、父と一族の復讐をちかう。商王を殺す―。それはこの時代、だれひとり思念にさえうかばぬ企てであった。少年の名は「望」、のちに商王朝を廃滅にみちびいた男である。中国古代にあって不滅の光芒をはなつこの人物を描きだす歴史叙事詩の傑作。
著者等紹介
宮城谷昌光[ミヤギタニマサミツ]
昭和20(1945)年、蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事、創作をはじめる。その後帰郷、ながい空白ののち「王家の風日」を完成。平成3年、「天空の舟」で新田次郎文学賞、「夏姫春秋」で直木賞、「重耳」で平成5年度芸術選奨文部大臣賞、「子産」で平成13年度吉川英治文学賞を受賞。著書に「孟夏の太陽」「沈黙の王」「侠骨記」「春の潮」「花の歳月」「晏子」「介子推」「孟嘗君」「長城のかげ」「玉人」「楽毅」等の小説、エッセイ集「春秋の色」「歴史の活力」「春秋の名君」等がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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歴史時々サスペンス本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
65
太公望というと私などはすぐ釣りを思い出してしまいます。それほど人口に膾炙しながらその生涯についてはあまりよく知られていません。周の時代の人ですから伝説的な話が多いのでしょう。しかしながらそれを逆手にとって宮城谷先生は物語を作り上げてくれています。まだまだこの巻では少年時代のことで将来のことは出てきませんがその片鱗が垣間見えます。2015/05/15
アルピニア
49
商軍の襲撃から生き延びた羌族の少年「望」と5人の子ども達。炎の中を逃走しながら、望は商王への復讐を誓う。古代中国の文化や情勢の解説を交えながら話が進む。合間に織り込まれる繊細な森や草原の描写に、ハッとする。さまざまな困難に直面する望。切り抜けるとわかっていながらもハラハラし、その時々の望の選択、決断にワクワクする。行く先々で出会う人達(鬼公、土公、箕子、洞穴の老人、逢尊)が後にどのように関わってくるのかも楽しみ。→ 2017/12/16
著者の生き様を学ぶ庵さん
37
羌族の孺子・望(後の太公望呂尚)が商の嗣子・受(後の紂王)より火攻めに遭ひ、他の羌族の孤児らと共に生け贄にされむとするところより第一巻は始まる。また、幼少期・青年期を経て仙人が如き老師に剣術を學び、東方の豪族・逢尊が娘・逢青を娶りしあたりにて第一巻は終わりにけり。宮城谷昌光先生が著書『王家の風日』を読みたる故、商の令尹・箕子、比干の登場はいとありがたし。望を見たるに、まさに「栴檀は双葉より芳し」とぞ謂ふべかりける。背負ひたる人生の重みたるや、余人と比ぶる能はず。父祖の仇敵・商を滅せんと欲する心意気や良し。2015/12/29
またべえ
26
太公望といえば、エサも付けずに釣り糸を垂れて、どこかの偉い人が訪ねてくるのを待っている、そんな朧げなイメージしかありません。小説「太公望」の主人公・望は父親を殺されます。父親の仇を討つことを心に誓って、仲間と逃避行します。なかなか厳しい逃避行です。仲間との絆も深まっていきます。でも、望は時々ふっと、仲間達の前から何の前触れもなく居なくなります。何の連絡もなしに数年!現在なら、上司から「報告とか、連絡とか、相談とかしろよ!」と怒られそうです。小説「太公望」の望、今のところ、釣り糸を垂れてる暇はありません。2019/02/27
ナハチガル
25
まず主人公が「望」という名前であることに驚いた。釣りをしている最中に、太公が軍師に望んだから「太公望」なんじゃないの?という程度の薄い知識で読み始めたので、どこからどこまでが創作なのかはわからないが、相変わらず爽やかな中華冒険ファンタジー的な世界が展開される。『晏子』の時にも書いたように、この世界にもやはり「匂い」がない。みんな毎日シャワーを浴びて制汗剤をつけてるみたいな感じがする。強い個性とも言える。この巻では「剣」にまつわる話がおもしろかった。考えてみると確かにヘンな道具だよね、剣って。A+。2024/08/25