内容説明
漱石の代表作『坊っちゃん』の登場人物、うらなり。個性豊かな教師たちのなかにあって、マドンナへの思いを残しながら、新任地へ赴いた彼から『坊っちゃん』の世界をみるとどうなるか。さらに、その後の彼の人生とは。明治、大正、昭和を生きたひとりの知識人の肖像を、卓抜な着想と滋味あふれる文章で描き出す。第54回菊池寛賞受賞!小林信彦が描く『坊っちゃん』の後日談。
著者等紹介
小林信彦[コバヤシノブヒコ]
昭和7(1932)年、東京生れ。早稲田大学文学部英文科卒業。翻訳雑誌編集長から作家になる。昭和48(1973)年、「日本の喜劇人」で芸術選奨新人賞受賞。平成18(2006)年、「うらなり」で第54回菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
96
『坊ちゃん』のスピンオフを現代作家が書くという試みが面白かったです。主人公はうらなり。うらなりの視点から見た『坊ちゃん』と言ってもいいでしょう。山嵐との再会から始まり、過去の自分の回想とその後の人生が語られていきます。本家と比較すると落ち着いた感じがありますが、それがうらなりのようなところだと思いました。2016/02/15
ひらちゃん
62
「坊っちゃん」に登場するあのうらなりのその後の人生を小林信彦が書いたら…。面白く読みました。どんな登場人物にも人生がある。スピンオフと言ってしまえば簡単だけど。「坊っちゃん」の中でマドンナをとられ転勤を余儀なくされた冴えないうらなり。彼の前に現れるのは何故に美人ばかり?その後のマドンナにまぁこんなもんだよねなんて思ったり(笑)坊っちゃんの名前って出てこなかった事を思い出したり。堀田先生も相変わらずで懐かしかった。2016/09/15
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
52
夏目漱石の『坊ちゃん』でも、出番の少なかったうらなりのスピンオフ作品。坊ちゃんだけが出て来ないその後の『坊ちゃん』。数十年後の山嵐との再会から始まるうらなりの回想。影の薄いうらなりが、坊ちゃん在任中のドタバタの裏で何を思っていたのか?うらなりから見た坊ちゃんは、ひたすら不可解な人物。坊ちゃんのべらんめえで小気味よくすすんでいくので、あの物語は喜劇として読めるけれど、実は悲劇を秘めた物語だったというのがよくわかる。喜劇も悲劇も見る者の視点次第。2016/12/12
saga
47
漱石『坊ちゃん』にインスパイアされた作品だった。それも地味なキャラクター・うらなり君目線の物語なのが面白い。表面上はうだつの上がらない彼だが、坊ちゃん先生に「五分刈り」というあだ名を奉り、心中では様々な異論反論を持ちつつ生きている。それが人というものの姿に思える。明治~大正~昭和初期まで、うらなり君が生きた軌跡を描くことで、それぞれが人生の主人公たり得ることを認識させてくれた小説だった。2024/03/27
Norico
37
漱石の「坊ちゃん」のうらなりが主役の物語。彼から見た坊ちゃんの行動は、不条理というか、謎だなぁ。あらためて坊ちゃんも読んでみたくなりました。2016/03/21
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