出版社内容情報
世界海難史上稀有の犠牲者を出した青函連絡船洞爺丸の沈没事故。船に乗り合わせた人々の様々な人生を描きつつ当時の状況を鮮やかに再現し事故の真相に迫る力作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
34
洞爺丸沈没事故には前々から興味があったものの、書籍として読めるのが少なく、あったとしても絶版になっているものがほとんどだ。本書もそんな絶版の憂き目にあった一冊だが、評価が高いので古書で入手し、読んでみた。なるほど、確かにこれは読ませる。刊行時、事故から二十数年しか経っていないことで、生存者や関係者への取材が可能だったゆえに、実に詳細で緊迫感のある描写と、元新聞記者であった著者の俯瞰した視野から分析する事故の複合的原因への客観的な推論も、本書の評価を高めている。(つづく)2024/07/10
ふたば
5
当事者への詳細な聞き取りと緻密な検証を経た濃密な内容。想像で補った部分も、検証が十分なだけに、かなり事実に近い内容であったのでは、とさえ思う。悪夢のような数時間。たらればで語ることも躊躇われる、悲しい事故。誰のせい、などと軽々しく言葉にできない。いろいろな事象がすべて悪い方に転がった。2019/08/31
スケキヨ
3
緻密に書きあげ、気象専門用語が連発。でも雰囲気でとてつもない自然の狂気がジワジワ来るのがわかって・・・読みながら「うわぁうわぁ」と言っていました。2008/11/22
千本通り
2
「洞爺丸遭難事件」は映画「飢餓海峡」の冒頭に出てくる話でかなり印象深いのだが、実際どんな事件なのかずっと気になっていた。今回読んでみて、途中から次はどうなるかハラハラして、ページをめくる手を止めることができなかった。解説の根本順吉氏は叙述が細部にわたっていることを称賛していたが、話の進め方も巧みで、ドキュメンタリー風物語といえるのかもしれない。 なぜ慎重な船長がこのときに限って出港したのかは誰にもわからず推測の域を出ないのだが、最後まで救命胴衣を着けなかった船長の気概は伝わってくる。名作、復刊を乞う。2022/03/20
Cinejazz
1
青函連絡船「洞爺丸」のベテラン船長は、天気図の判読に詳しく、台風の峠は過ぎたと判断、函館港からの出航を決行したが、戦後最大の犠牲者を出す海難事故となった。後の海難審判では船長の過失によるものとされたが、管理運営を負う当時の国鉄も責任を免れなかった。犠牲となった船客の挿話が胸を打つ。2017/09/28