文春文庫<br> 穢土荘厳〈下〉

文春文庫
穢土荘厳〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 477p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784167224110
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

奈良時代の長屋王事件から大仏開眼までを、政争に明け暮れる皇室から庶民の暮しまでを生き生きと描く雄大で波爛万丈の歴史ロマン

内容説明

大地震、飢饉、天然痘による藤原四兄弟の死、めまぐしい遷都、叛乱、と聖武帝はいっときも心がやすまらない。懊悩の果て、遂に大仏建造を決意、天平15年、詔と共に国中の富と民がかき集められ着工された。帝の悩み、実力者達の思惑、民の苦しみ、すべてをのみ込んで仏は巨大な御姿を現してゆく―。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

こぽぞう☆

21
上巻の冒頭部分と下巻の最後が対応している。聖武天皇の懊悩、貴族たちの権力争い、暗殺。一方で、動物か物のような扱いを受ける、奴婢や浮浪たち。狂言回し的な役割を演じる手代夏雄、のちの僧、行浄もまた、昔の妄執を捨てきれない。この作品が最初に発表された〜昭和58年以降、様々な考古学的発見があり、長屋王家についてなど、少し印象が変わってきている感はある。2016/07/22

hrmt

21
華麗なる天平の時代に繰り広げられる権力闘争。天皇という最高位でありつつ恐れ苦悩し続け心の平穏に程遠かった聖武天皇と、仕組まれた権謀ではあっても藤原政権の確立に邁進し続けた光明皇后。長屋王の変も結局は蘇我系女帝と藤原氏との皇統という権威への争いである。俗世を捨てて出家した教勝尼と行浄が一番心安らかな人生となったのではないだろうか。2014/03/06

エドワード

18
遠い小学生の時に習った八世紀の日本の歴史は、大宝律令から平城京遷都、大仏の建立と、古代日本の成長に清新の気風に満ちていた。しかし大人になると、歴史とは家族が敵味方に別れる戦であり、女性と子供が鍵を握っていることが解かって来る。彷徨う聖武天皇は昔から謎だったが、帝王のあまりの孤独に驚く。異なる視点から度々描かれる持統天皇、元正天皇、孝謙天皇。彼女たちの真っ直ぐな性格は時に家族を救い、時に家族を悲劇に陥れる。何万人もの祈りと犠牲と喜捨の末に大仏は開眼する。それでも仏国土とは程遠い、という夏雄の感慨が痛ましい。2015/09/11

ナオデラ

8
自身と血統が重ねてきた積悪から逃れようと大仏造立に邁進する聖武天皇。対照的に理由も分からずただ労働力として参加する奴隷や役夫。その様な弱者に実際に光を当てようとするのは形だけの大仏ではなく、ゴミのような勧進でも毘盧遮那仏と結縁を結べると説く行基大徳率いる奉仕集団。どちらが本当に幸せを感じたのでしょう?2015/07/24

こまったまこ

4
聖武天皇治世の壮大な叙事詩ただいま読了。庶民の視点からこの時代を見てみると、なんて生きにくい世の中だろう。生き地獄と言ってもいいくらい救いがない。だから僅かなものでも寄進してあの世での安寧を求めようとするのか。現在に望みが持てない彼らがとても気の毒。仏教は現世の苦しみから救ってくれるものではないと改めて認識。より現実的な宗教。大勢の犠牲の上に造られた大仏様。現代人の私からすると造るべきものではないとつくづく感じた。2013/02/07

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