内容説明
仕事ぶりと美貌を買われ、大学病院から湘南老荘病院に引き抜かれた看護師の深沢理恵。リゾートホテルのような豪華な老人病院で特別室の担当となった理恵は、有名俳優の妻ややくざの組長など、難物の入院患者たちに翻弄される。やがて患者の一人が不可解な死を遂げて…。老人医療の暗部を抉る迫真のミステリー。
著者等紹介
伊野上裕伸[イノウエヒロノブ]
昭和13(1938)年、大阪府生れ。國學院大学文学部日本文学科卒業。高校教師、興信所調査員等を経て、昭和50年から損害保険調査員として働く。以来、三浦和義事件をはじめ交通事故・医療・火災調査などを数多く手掛けた。平成6年、「保険調査員赤い血の流れの果て」で第33回オール讀物推理小説新人賞を受賞。平成8年、『火の壁』で第13回サントリーミステリー大賞読者賞及び日本リスクマネジメント学会文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamakujira
7
老人病院へ転職した理恵は特別室担当の看護師として勤務する。日額3万5千円の差額ベッド代を払う特別室の患者は、大学教授、サラ金創業者、暴力団組長、有名俳優の妻など、癖のある人ばかり。そんな患者と送る日々、理恵を含めた一部のスタッフが老人医療の暗部に気づく。ただ、告発する理恵たちも言うように、特別室や認知症の患者については、違法行為でも仕方ないと思えてしまう。安楽死が違法だから嘱託殺人や自殺になっちゃうんだよねぇ。藤尾と加代の件がなければ、岡部は嫌悪しても中林は非難できないと思ってしまう。 (★★★☆☆)2016/05/29
まちだまちお
2
★3.0 う~ん、終末医療には、さまざまな問題があるということが良くわかる。確かに、生き過ぎるのも考え物、自宅で臨終を迎えることが稀有になっている現在、自分もどのように死にたいのか?を意識しておく必要があると思った。サスペンスとしては物足りないけど、読み応えはあったね。2010/07/29
prosecco
1
一泊35kの差額ベット代+食事等サービス料の高額な特別室に住まう其処彼処が病んだ人々を診るのは容姿の要素多めで引き抜かれた看護師さん。そんな病院で実践される老人医療は看取る側の都合に合わせて余命をコントロールしているような、なんて、今にも通ずる保険医療と高齢化の暗部をほのめかすような本書、患者側の視点から理想と現実との実差と諸々に板挟まれたりする医師看護師と、対極に立つしゃぶり尽くさんとする側、勧善懲悪だけでは収まらない諸般の事情をふまえつつ、己の判断基準を、人としての矜持を折り合わせるのか、問われます。2017/01/02
whizz
1
全体的に重いお話でした。登場人物が多くてちょっと読みにくかった。自分が老人になって病院などでお世話になるのが怖くなった。2013/06/17
青
1
生命保険もそうだけど、終末医療についても、自分の財力と残された時間を比べて頭を悩ませてしまうのが事実なのだろう。あの世に貯めたお金を持っていけるわけではない、最期は快適な環境で残された時間を過ごしたいけど、一体自分はいつまでもつのだろう? そう考えてしまったり、介護に疲れた家族が「一体いつ終わるのか」と考えてしまうことは自然なことと思える。自分の老後はどうなるのか、改めて考えてしまった。2010/03/03
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