出版社内容情報
スペイン内乱からインドシナ戦線まで五つの戦場の写真を撮ったキャパ。誰より勇敢で誰より戦争を憎んだキャパ。これは彼の心の叫びを綴った恋と従軍の手記である
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
152
中学校の時、感想文を書いたのを思い出した。ピンキーのエピソード、中学生ながらに、キャパは可哀想と思った。でもこんな生き方をしていたら、妻になろうと思う女性はたまったものではないだろう。爆撃機の照準器のエピソードも面白い。おそらくノルデン光学照準器だったのだろう。
absinthe
131
【再読】面白かった。中学校の頃に読んだ記憶が強烈だったが、当時の感動が蘇った。写真家とし戦場を駆け回った日々。敵性外国人として身分を半分偽りながらの危険な活動。爆撃照準器の話、地雷原の話、目の前で兵士が死体になった話。アフリカ戦線、ノルマンディー上陸に空挺作戦。そこに居た当事者だけが語れるエピソード。ピンキーとの別れは涙だが。こんな主人では妻は心休まらないだろうし。2024/04/09
びす男
85
第二次大戦で活躍したカメラマンの手記が、その実相を活写している■有名なノルマンディー上陸作戦の写真は、ちょっとピンぼけ。「キャパの手はふるえていた」のキャプションもまた、第一線の過酷さを示している■それでも、兵士は朗らかさを失わない。どこか笑えないジョーク、銃後の人々に託す手紙。彼らにとって、戦争は現実そのものなんだと思わされた■「私は戦死する最後の男の写真を撮った。生き残ってゆくものは、死んでゆく彼らをすぐ忘れ去るのだろうか」。キャパの述懐はときどき切ない。戦争を切り取る男の、やりきれない本心だろう。2018/01/01
ヴェネツィア
66
再読。"愛した!撮った!散った!"―永遠の戦場カメラマン、キャパの従軍記。ある時は空挺部隊と一緒にパラシュートで降下し、そしてDデイには上陸舟艇で真っ先にノルマンディーに上陸。文字通り波乱万丈の日々を送ったキャパだが、その眼差しは暖かく、どんな時にもユーモアとウイットを失なうことはなかった。そんな彼は1954年、ハノイ南方の戦場で地雷に散った。41年の華々しくも短い生涯だった。なお、表紙はDデイの日の「ちょっとピンぼけ」の写真。「そのとき、キャパの手はふるえていた」。2012/10/01
aika
55
「生き残ってゆくものは、死んでゆく彼らをすぐ忘れ去るのであろうか。」戦争の中に生き、戦争の中に死んでいったキャパ。爆撃の中、戦闘機からパラシュートで飛び降りる勇気を持つ彼が語る、兵士との賭け事やお酒、ピンキィとの恋愛話は人間味に溢れています。あまりに残酷な惨状を前し、時には震える手でシャッターを切り、時には写真を撮らなかった彼の素顔を覗いた気分です。初めてキャパの写真を美術館で目にしたとき、戦地で闘う兵士やそこに住む人々の表情が、なぜ心に焼き付いて離れなかったのか、少し分かったような気がします。2019/03/08