内容説明
ひたすら歩むことでようやく辿り着いた晴れの舞台で、61歳の野党政治家は、生き急ぎ死に急ぎ閃光のように駆け抜けてきた17歳のテロリストと、激しく交錯する。社会党委員長の浅沼稲次郎と右翼の少年山口二矢。1960年、政治の季節に邂逅する二人のその一瞬を描くノンフィクションの金字塔。新装版「あとがき」を追加執筆。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
目次
序章 伝説
第1章 十月の朝
第2章 天子、剣をとる
第3章 巡礼の果て
第4章 死の影
第5章 彼らが見たもの
第6章 残された者たち
第7章 最後の晩餐
終章 伝説、再び
著者等紹介
沢木耕太郎[サワキコウタロウ]
1947年東京生まれ。70年に横浜国立大学経済学部卒業。若きテロリストと老政治家のその一瞬までのシーンを積み重ねることで、浅沼稲次郎刺殺事件を描ききった『テロルの決算』で79年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『一瞬の夏』(81年 新田次郎文学賞)、『凍』(05年 講談社ノンフィクション賞)など常に方法論を模索しつつノンフィクションに新しい地平を開いてきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
196
社会党委員長、浅沼稲次郎が右翼青年山口二矢(おとや)に刺され死亡した。その事件を追うルポルタージュ。意外にも浅沼は毎朝神棚に柏手を打ち、演説中にも天皇陛下万歳をし皇居にも頭を下げる人だった。周囲からは右派と思われていた。右翼の赤尾とは知り合いでもあり、すれ違えば声を掛け合う中でもあったという。訪中時に「米国帝国主義は日中共通の敵」と演説したことが執拗に取り上げられ、社会党をも驚かせてしまう。その後、右派とたもとを分かち左派のリーダーになってしまう。2021/04/27
zero1
133
刺殺したのは17歳の右翼少年。60年10月に日比谷公会堂で起きた浅沼稲次郎(社会党党首)暗殺事件。二人の交錯を描くノンフィクションを再読。この事件は多方面での影響があった。たとえば日本初のピューリッツァー賞受賞(後述)や後のノーベル賞作家、大江健三郎の作品にも影響が(後述)。沢木としては「一瞬の夏」と並ぶ代表作のひとつ。山口について聴講生だったとされる大東大が【学生でない】と表明、玉川学園の小原氏が【大切な生徒】と真摯に受け止めていた対比が印象に残る。山口は烈士?それともテロリスト?もちろん後者だ。2019/10/20
遥かなる想い
94
社会党委員長の浅沼稲次郎と右翼の少年山口二矢を緊迫感あるタッチで描いている。昭和のあの時代、どうして皆死に急いだのか。考えさせる名著である。2010/05/08
mike
88
1960年10月、当時の社会党委員長浅沼稲次郎が17歳のテロリスト山口二矢の短刀に倒れた衝撃的な事件についてのノンフィクションである。庶民派と慕われた老政治家の壮絶な過去と周囲が知らなかった彼の孤独。一方、直情的で暴力的な右翼のテロリストが裏で見せる穏やかで優しい顔。この二人の人物像を浮かび上がらせる沢木の取材と構成の力が見事だ。そしてあの瞬間に至るまでの緊迫感は私の恐怖を掻き立て心拍数を上げていく。当時を知らない私がその場にいるかのような臨場感に圧倒された。凄い本を読んでしまった。2023/10/23
安南
64
この本の凄さは、17歳の少年テロリストのみならず、殺された社会党委員長の人生をも綿密に追っていくことで戦後社会の有り様を浮き彫りにし、二人のこうならざるを得なかった運命というものの本質をまざまざと見せつけてくれることだ。日常の何気ないエピソードまでも丁寧に掬い取り、その一々がとても魅力的に描かれている。稀有な二人の人となり、息づかいまでもが感じられ、すっかりこの二人の虜に。読み終わってしばらく経つが、未だに恋煩いのような余韻の中にいる。2016/01/28