内容説明
土地についても宿命的な出会いといったものがあるのだろうか。そこに至ることがなければいまの自分はありえなかったというような土地が…。「たったひとつの土地」をひそかに求めながら街を歩く。事実と虚構の狭間にあるものを深く意識しつつ書物を読む。「方法」と真摯に格闘する日常から生まれた珠玉の文章群。
目次
夕陽が眼にしみる―歩く(改札口;私の上海;体の中の風景;かげろうのような地図;街の王、泥の子 ほか)
苦い報酬―読む(父と子―大宅壮一;歴史からの救出者―塩野七生;一点を求めるために―山口瞳;放浪と帰還―藤原新也;無頼の背中―色川武大 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
497
沢木さんの文章は読みごこちが佳い。彼の目線でいっしょに知らない街を旅したり、知っている景色をながめたり。今作は彼の日常(旅を含めた)と、後半は書評という構成になっている。こういう書評で未知の作家を知ることができてうれしい場合と「この作家の作風はぜったい自分には無理」という場合がある。今回は過去に数作読んでその取材力に脱帽した吉村昭と、長年積んでいるカポーティ(邦訳)を読んでみたいと思った。シリーズになっているようで、現在『Ⅱ』を寝る前の楽しみに読んでいる。2026/03/25
KAZOO
100
再読です。沢木さんのエッセイで、1980年代後半から90年代前半に書かれたものです。この本では2部に分かれていて前半が「歩く」、後半が「読む」ということで、主に旅行関連のものと読書関連のものが集められています。様々な場所で写真を撮ったりして「たった一つの土地」を捜し歩いているようです。後半は作家ごとのエッセイが中心ですが、塩野七生さん、吉村昭、近藤紘一、阿部昭についてのものが印象に残りました。2025/03/28
ふじさん
73
「一瞬の夏」から読み始めた作家。時代がほぼ重なり、沢木耕太郎の本を読みながら人生を歩んで来たように思う。今回再読した本は、特に「夕陽が眼にしみる」の彼の旅に対する強い思いが書かれているし、「苦い報酬」は、私の好きな作家の塩野七生、吉村昭、近藤紘一についての文章があるので読んだ。さすがは沢木耕太郎、今読んでも文章が腐っていない。文章が腐っているとは、この本に出てくる大宅壮一の息子の歩が、父に投げかけた問い掛けに、沢木が使った言い回しだ。この本には、方法と真摯に向き合わう沢木の珠玉の文章群がある。 2020/12/21
pirokichi
24
1982年から91年、著者35歳から44歳時に書かれたエッセイをまとめたもので「歩く」と「読む」の二部構成。読み友さんのレビューがきっかけ。端正な文章。気持ちいい。わくわくする。背筋が伸びる。かっこいい。いろいろ読みたくなる…。「吉村昭は完璧なノンフィクションを書くことで、かつてないほど小説らしい小説を書くことに成功した」…「事実と虚構の逆説」という吉村昭論には感服した。また近藤紘一論では早速『サイゴンから来た妻と娘』を注文した。三島由紀夫の『剣』の、高校一年の時に著者が書いた感想文にも驚いた。2026/05/05
makimakimasa
13
バスで街を巡りながら体の中に自分の地図を作る。歳を取っても何かが起こる可能性のある街に住み続けたい。写真を撮ると対象の記憶が薄れ易くなる。自分とはまるで正反対なのに、すっと心に入ってくる思考の軌跡と心地良い文章。作家評と書評は、知らない人物や作品でも、沢木の読み方・感じ方に関心があれば退屈しない。だがやはり、「妻と娘」シリーズを読破している近藤紘一が、最も興味を惹かれる。1つの体験がどの様に深化したかを俯瞰出来る『目撃者』編纂、近藤の諦念に近い不思議な寛容さに繋がる自己放棄の発見。2022/03/14




