出版社内容情報
藩中一、二を競いあう剣の遣い手二人が奇しき宿縁にむすばれ対峙する。男の闘いを緊密な構成と乾いた抒情でえがきだす名品四篇!
内容説明
不伝流の俊才剣士・片桐敬助は、藩中随一とうたわれる剣の遣い手・弓削新次郎と、奇しき宿命の糸にむすばれ対峙する。男の闘いの一部始終を緊密な構成、乾いた抒情で鮮烈に描き出す表題秀作の他、円熟期をむかえたこの作家の名品を三篇。時代小説の芳醇・多彩な味わいはこれに尽きる、と評された話題の本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
465
どちらかと言うと苦手な武家もの。ただしこの短編集の主人公にはどれも女性の影がある。機転が効いて心優しく、ときには小刀も使える。これも中高年男性の理想の女性像かな(笑)表題作が特に好み。2023/01/08
三代目 びあだいまおう
260
短編4話で読みやすい。かつて剣術を極めた男(4話は女)が、日常にうらぶれ、騒動に巻き込まれる。自身の信ずる正義の元。因縁の相手に決闘を挑む話。暗躍する悪意に平々凡々な主人公の覚悟が『正義』を守らんとする男気!その裏で支える女房の矜持に惚れます!心から思うが、男が男の矜持を貫くための女の支えはデカイ!最終章の田鶴の気っ風に惚れた❗時代は違えど我が妻に感謝(恥)です!全話のタイトルに場所と時間が示され、臨場感を煽ります。短編の名手、藤沢先生の作品に馴染みのない方にお薦めできる『入門編』といえるかもです‼️🙇2019/07/05
yoshida
166
武家物の短編四篇からなる短編集。藤沢周平さんの円熟期の作品と言える。どの短編も味わい深く、手に汗握る剣劇の展開、人情の機微、爽やかな読後感が味わえます。ある者は名誉を挽回し、ある夫婦は藩命に耐え絆を強くし、ある妻はあてにならない夫に変わり家の名誉を守る。様々な苦節があれど、堪え忍び、鍛練をし乗り越える姿が清々しいです。「麦屋町昼下がり」で、弓削を倒した敬介が寺崎の満江を見つめたラストが、二人の幸せを暗示している。「榎屋敷宵の春月」での田鶴の気丈さと小太刀の腕の見事さ。小気味良い作品。満足の読書時間でした。2016/10/05
ケンイチミズバ
129
タイトルのカッコいいこと。真昼の決闘なわけです。一の手をたとえ避けたとしても二の手を防げるのか、受け流すだけでは止められないと判断し反撃に出た。たまたま通りかかった夜道で逃げる女性を救った敬助。しかし、それだけでは終わらなかった。下士が上士を斬ってしまった。男は暴漢の類ではなく禄高百石を超える上士、その息子新次郎は江戸屋敷づめで藩随一の剣客だが変人らしい。帰国と共に仇討ちは必至。敬助の師匠はなんとアル中で酒を飲んでいないと手が震えてしまう。もう日もない。不安に揺れながら稽古を続けた。そしてその時は来る。2020/09/14
じいじ
122
情緒豊かな月の情景描写から始まる武家モノ4篇。大好きな藤沢周平の懐に包まれての読み心地は堪りません。偶然、女を追ってきた男を斬ってしまう。その男は剣の宿敵の父親、助けた女はその宿敵の妻女だった。それを境に宿敵からの仇討ちを苦悶する男剣士を描いた表題作が面白い。【榎屋敷宵の春月】も味わい深い良作である。出世争いの三人の武士、その陰で繰り広げられる妻たちの思惑と駆け引きが見どころ。そして女の嫉妬を丁寧に綴った物語。藤沢周平の武家モノの秀作を集めた一冊。2017/04/09