出版社内容情報
昭和三十年代初期の自衛隊員の日常を凝視して、組織のなかの歯車として汗と埃にまみれた青春群像をいきいきとあざやかに描破した第七十回芥川賞受賞の長篇異色作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kochi
12
仕事の口のない郷里を出て東京でガソリンスタンドの従業員として暮らした後、自衛隊に入った青年、海東。幾分屈折した雰囲気の青年の目から九州の自衛隊での訓練を描く表題作と、配属先の北海道での生活を描く続編(「砦の冬」上官との関係が一つの焦点になる)。自衛隊があるから朝鮮戦争による特需があり経済発展の転機となった後という知識があったのだが、世間一般はそうでもなく、まだ豊かではなかったらしい時期の日本の青年たちの様子や赤線廃止などの社会背景がうかがい知れる。表題作は芥川賞受賞作だが、あまり知られていないのか?2021/11/12
ふたし
4
著者本人と思しき若い男性の、自衛隊入隊まもないころから辞めるまでの1年半ほどを描く2作。みな、いろいろな理由で入隊している。職業軍人的な幹部とそうでない者との隔たりは大きい。自衛隊員の全てがマッチョなわけではない。2024/10/10
littlelielittle
0
4、5年前に鎌倉駅近くの古本屋で購入。自衛隊が部隊ということであまり乗れず、冒頭は三回ほど読んだ記憶がある。いったん読んでしまえば青春小説ということで難なく読めた。これまで読んだ作品よりは確実に落ちる。2011/08/31
鯨波
0
先の大戦後9年、1954年に陸上自衛隊発足。 その3年後、朝鮮戦争による好景気も終わった1957年(昭和32年)に入隊し翌年除隊。 自衛官として経験した1年を美化することも自虐することもなく 目にしたことを淡々と描いている。 同期の入隊理由と食事の待遇シーンは、なんとも象徴的だった。 昔の方が人間味があったのだろう。 現代は飯とパンを食べたら懲戒を喰らうのだから、野呂さんも驚くだろう。 2023/02/12