内容説明
毎日新鮮な花束を買っては捨て、墓参を欠かさなかった女。その行動の裏に隠された、アリバイ作りとは違う「ある企み」とは?謎解きの先に潜む人間の心の奥を描いた「花を捨てる女」、女性同士の友情がいつの間にか悪意の執着に変わる「アイデンティティ」など、円熟の筆致が冴える傑作ミステリー6篇を収録。
著者等紹介
夏樹静子[ナツキシズコ]
昭和13(1938)年、東京生れ。36年慶応義塾大学英文学科卒業。48年「蒸発」で第26回日本推理作家協会賞を受賞。フランス語訳「第三の女」で1989年度(第54回)フランス犯罪小説大賞を、中国語訳「Wの悲劇」で2001年度中国・翻訳作品賞を受賞する
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すきま風
4
やられたー!このどんでん返しに続くどんでん返しの巧妙さ。夏樹さんだからこそ描ける短編ミステリ集でした。普通のどこにでもいる人々が犯罪に手を染める動機なんて、こんな風にとても単純なものなのかもしれません。尽くす女、家族写真と特に三通の遺言にはすっかり騙されました。面白い!2017/07/19
れん
1
どの短編も読み応えがありました。単純な推理小説ではなく、誰もが心の奥底に持っている嫉妬、虚栄、不信などを織り交ぜた作品でした。私が若い頃から、大好きな作家の夏樹静子さんです。訃報に驚きました。ご冥福をお祈りします。2016/03/23
斧
1
どの作品も緻密な計画、でも思いも寄らない一片によって崩れていく過程が見事。割り切れる手口と割り切れない動機の対比もすごかった。トリックも心理も読んでて面白い。2015/02/02
てつじろう
1
ショートショートみたいな感じでスラスラ読める作品でした。『三通の遺言』が1番面白く、約60ページの中にトリックや心理描写を見事に盛り込んでいてグイグイ引き込まれました。2011/07/19
AZ
1
お風呂読書で再読。悲しい女の情念を描かせると本当にうまい作家さんだと思います。推理小説を何度も読んで面白いの?と聞かれたことがありますが、トリックだけでない面白さがあれば何度読んでも面白いものです。2008/10/25